創業時に始めた事業や伝統のある事業を捨て去ることは、事業を継続してきた経営者にとって忍び難いものがあります。この点でお手本となるのがゼネラル・エレクトリック社です。彼らは事業の選択と集中において、創業者エジソン以来130年以上続く、決して小さくは無い照明事業を売却しようとしています。
経営者の多くは看板事業を捨てることが忍び難い
私達日本人の多くは、「創業◯◯年伝統の〜〜」という響きに弱く、実際にその看板を活用することで、今の時代に事業の活路を切り拓く会社もあります。
一方で看板はあるものの、その内情は既に以前より利益が取りにくいビジネスモデルとなっており、既存の事業を捨ててでも今すぐ他の利益が取れる事業へ移行すべき会社もあります。
しかし、どうしてもこれまでの看板事業(ビジネスモデル)を捨てることが「先代に悪い」「これまでの基盤が失われる」などの理由で捨てがたいと感じる経営者の方も多いようです。
特に、業績が◯十年前とあまり変わらない、または業績がなだらかに下落している、いわゆる“ゆでガエル状態”の会社にこの傾向が見られやすくなっています。
創業者エジソンが始めた照明事業からの撤退も見えてきたGEの凄さ
一方で先週、アメリカからは、1892年にエジソンが創業して以来の流れを組むゼネラル・エレクトリック(以下、GE)が、照明事業を約550億円程度で投資銀行へ売却する可能性がある、という報道が飛び込んできました。
確かに売上高は、GE全体の約15兆5000億円に対して2%程度の事業となっていますが、それでも2,400億円相当の規模の売上をGEは捨てようとしているのです。
しかし、創業者がつくったビジネスについてまでも、このように選択と集中の対象として、整理しようとする企業もそう多くはないと思います。
更にGEは、1990年代に伝説の経営者と賞賛されたジャック・ウェルチが拡大させた金融事業からも既に撤退を始めています。
GEはこれらの事業売却によって得た資金で、既に航空機エンジンやエネルギー関連、IOTなど産業向けのビジネスへの再投資を進めています。
事業承継を含むM&Aに与えられる役割は拡大する
このようにGEほど長年続く企業も、歴代の社長達は同じことだけをやっておらず、常に新しいものに取り組んでいます。
既に変化は起きていますが、これからより一層、各業界における競争は激化し、メジャーな業界は、少数の大企業と、特徴を持つ個人や個人に近いスペシャリストに分かれていくのではないかと感じています。
今後は日本国内でも、会社を変化させるため、継続させるために、あるいはうまくバトンタッチするために、事業承継を含むM&Aに与えられる役割が重要なものとなります。
ぜひ、本稿を読む経営者の皆様には既存の事業だけに囚われず、自社の将来に必ず起こる変化を能動的に生かせるよう、準備をしていただければと心から祈念しております。
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