10月半ばに一部で報じられていた、キリンとコカ・コーラの資本提携が頓挫したことが、日経新聞によって報道されました。
キリンのM&Aについては、過去にもサントリーとの間で「資本に対する徹底したマジョリティ取り」という今回と同じ方針が見られており、一戦略として理解できる部分はあるものの、手段が目的と化している可能性が見え隠れしています。
キリンとコカ・コーラの資本提携が頓挫となる
10月半ばに一部で報じられていた、キリンとコカ・コーラの資本提携が頓挫したことが、日経新聞によって報道されました。
統合が見込まれていたのは、清涼飲料の分野です。
清涼飲料業界のシェアについては以前、アサヒ飲料が伏せ字でシェアデータを公開しており、これによると、
- 1位:コカ・コーラ
- 2位:サントリー
- 3位:アサヒ
- 4位:キリン
- 5位:伊藤園
の順序となっています。
もし、キリンとコカ・コーラが統合すれば、シェアは圧倒的1位になっていたはずです。
キリンのM&A失敗については、直近も「M&Aで2,000億の損失観測を報道されたキリンビールに中小企業が学ぶこと」という記事でもご紹介しました。
では、今回の資本提携が頓挫したのはなぜなのでしょうか?
キリンとコカ・コーラの資本提携が頓挫した理由
日経新聞の記事によると、キリンはお互いに数%程度の株の持ち合いを考えていたが、資本に対する考え方があわなかった、ということです。
ここから推測されるのは、コカ・コーラがマジョリティーを取る合弁会社の設立がコカ・コーラからキリンへ提示され、それをキリンが断ったというストーリーです。
しかし、清涼飲料水ビジネスでは、圧倒的にコカ・コーラの力が強く、そこで自分たち議決権や影響力を維持したまま、記事にあるような数百億円のコスト削減効果を得る、というのは虫が良すぎる話ではないかと思います。
コカ・コーラからすれば、敵に塩を送るような話になってしまうからです。
キリンはサントリーとの統合にも失敗しましたが、この時も同じように資本に対する考え方の相違が大きな要因となりました。
財務体質が万全なこともあり、キリンにとってのM&Aに対する基本方針は、自社が主導権をとっていくことなのかもしれません。
それであれば、自分と同等か、自分より強い相手との資本提携は、今後も難しいでしょう。
キリンの持つ基本方針は戦略的に無駄になり得る
M&Aで資本面の優位性を持つ方針、これはこれで1つの戦略となります。
しかし、結果は交渉してみないとわかりませんし、当初より重要な条件があわないことを確認せずに交渉を進めても、時間とコストばかりがかかってしまいます。
これは買収を検討する企業の全てに共通するのですが、M&Aの担当者が、仕事をした気になっていないか、本当に企業の目的にそった活動をしているのか、経営者の皆さんは厳しくチェックをする必要があります。