社内恋愛から結婚に至る人が非常に多い一方で、社内恋愛を禁止する会社があるのも現実です。そこで本稿は、社内恋愛を禁止する会社が嫌がる3つのリスクをご紹介します。また、就業規則で社内恋愛を禁止する場合は、どこまでその効力が有効となるのかについても考えてみましょう。
社内恋愛から結婚に至るのは心理学的にも自然
社内恋愛で結婚されなかったとしても、社内恋愛をきっかけに結婚されたカップルを、一組くらいは思い浮かべることができるのでは?
社内恋愛から結婚に至る人が多い理由は、「人は接触する回数が多い人間に対して好意をいだきやすい」という心理学の「接触効果」の観点から考えればわかりやすいかもしれません。
身近で毎日仕事を頑張っている、仕事をサポートしてくれる、彼または彼女の姿を毎日近くで見ているうちに、この人と人生を一緒に生きていこう、この人の支えが必要だ、と考えるのは自然なことです。
一方で、社内での恋愛禁止をルールにしている会社も存在します。
社内の風紀や規律を守るため、就業規則で「社内恋愛禁止」を明文化している会社もあります。
本稿では、就業規則で恋愛を禁止する会社の嫌がる3つのリスクとは?就業規則で恋愛を禁止することは可能なのか?という点について考えてみたいと思います。
社内恋愛を認めぬ会社が主張する3つのリスク
人は一度恋に落ちると、相手に対してかなりヒートアップした状態になったり、冷静な状態からは考えられない逸脱したことも行えてしまうものです。
一方、会社という場所が何をするところか冷静に考えると、会社は基本的に利益を生み出し、それを永続することが目的の場所です。
この大前提を元に、就業規則で恋愛を禁止する会社は、以下にあげる3つのリスクを遠ざけようとします。
- 社内の士気低下
- 社内の生産性・効率性低下
- 法的な問題
1)社内の士気低下というリスク
まず、第一に、社内恋愛を公然と許すと一部で公私混同が起こり、これが社内の士気に影響を及ぼし、ルール・秩序が崩壊していく恐れが生じます。
社内の士気とは、戦争に例えるならば戦闘意欲に匹敵するものです。
自分は真面目に仕事をしているのに、かたや一方では勤務時間中にも関わらず、イチャイチャしている様子を見せつけられる。
このような状況では、恋愛当事者以外の人間の士気が下がるのは当たり前の話です。
全体として戦意を喪失した会社が、いくつものライバル会社に打ち勝ち、業界のトップに躍り出ることは難しいでしょう。
2)社内の生産性・効率性低下というリスク
また、社内恋愛は、社内での生産性・効率性を著しく低下させる場合があります。
冷静な状態から逸脱し、恋愛を社内にまで持ち込み、公私混同を起こしている社員の多い会社では、恣意的な人事操作が行われがちとなります。
恋愛関係にあるもの同士を、有利なポストにつけたり、一緒にいられる環境を作ろうとすることで、人的リソースの効率性が著しく損なわれる可能性があります。
これが敷いては、社内の生産性を低める要素となることは、誰もが理解できるところでしょう。
3)法的な問題に巻き込まれるリスク
さらに、社内恋愛が社会人としてのルール・モラルまで奪い、最終的に法的リスクの温床となることがあります。
恋愛に夢中となり、仕事に集中できない状態が続けば、必然的にその人の評価は下がり、組織の中でリーダーシップをふるうチャンスを逸してしまいます。
それだけなら良いのですが、恋愛関係がもつれてしまい、最終的にセクハラやストーカー問題等に発展すれば、会社が社員間の刑事事件や訴訟問題に巻き込まれてしまう可能性が生じます。
ボランティアではなく、労働の対価として給料を得ている以上、職務に精励するのは当然です。
仕事に真摯に取り組むうえで弊害となる社内恋愛を、これら3つの理屈から禁止にする企業が多いのも納得のいくことです。
就業規則で社内恋愛を縛れる範囲には制限あり
就業規則に従うことは社員であれば当然であり、ルールを守らない人は懲罰を受けることすらあります。
しかし、就業規則には限界があります。それは、就業規則の及ぶ範囲が、通常の概念では、勤務時間内と明記されており、それを超えた部分にまで立ち入ることが難しい点です。
社内恋愛と就業規則を考えた場合、仮に社員同士が恋愛感情を抱いていても、それを社内に持ち込まなければよい、というのが現代社会の一般的な風潮です。
会社にいる間は一心不乱に仕事に打ち込み、土日の休日は恋愛相手と大切な時間を過ごす、これは通常の概念からは許されることですし、そこまで就業規則が縛ることはできません。
従って、就業規則が社内恋愛禁止を縛れる範囲は、原則として社内で勤務をしている間なのです。
しかし、これにも例外があります。
就業規則の中には、社会通念上好ましくない行為を行った場合、それが勤務時間外であっても会社の信用を失墜したという観点から、なんらかの処分をする場合が少なくありません。
例えば、酒に酔って自動販売機を壊してしまったり、休日に自動車を運転中、人身事故を起こし人の生命を奪ったケースなど、会社は、社会的な一般常識から照らして誰もが納得のいく処分を下すことは往々にしてあるものです。
これは規則で縛る・縛らないという観点を超えた、社会のルールとも言うことができます。
就業時間内の恋愛分離は社会人として暗黙のルール
さて、社内恋愛を就業規則で縛れる範囲を述べてきましたが、世の中には器用な人もいるものです。
社内の誰にもばれることなく、また誰にも迷惑をかけることなく恋愛関係を続け、めでたくゴールインするというカップル達です。
こんな人たちは例外中の例外で、自分で自分を厳しく律し制することのできる人か、よほど厳しい修行を乗り越えてきた人だと思った方がよいと思われます。
通常のケースでは、就業規則で勤務時間内の業務に集中することを明文化し、社員にそれを順守することを求めるのが一般的です。
また、就業規則が一般的に及ばない勤務時間外であっても、社員には会社を背覆っている自覚と責任感を持たせ、社会人としての秩序と良識ある行動・振る舞いを期待するものです。
そして、その期待を裏切らないよう、たとえ休日であっても、自分の行動には責任を持ち、社会を形成する構成員のひとりとして、誰からも後ろ指を指されることのないよう、日々精進することが求められるのです。
それは社会人にとって、隠されたルールと言えるものかもしれません。