平成28年10月より、高年齢者の就労機会の確保、及び希望者全員が安心して働ける雇用基盤の整備を目的として「65歳超雇用推進助成金」が創設されました。この助成金は創設当初から当サイト記事でも扱っていますが、60歳以上の有能な従業員を抱えている会社さんにとって、リスクは本当に限りなく少ないものです。ぜひ申請をしてみませんか?
65歳超雇用推進助成金は本当に魅力的な助成金
平成28年10月に、「65歳超雇用推進助成金」が創設されました。
助成金が創設された当時、「新たに始まったリスクが少なく高額な助成金制度〜65歳超雇用推進助成金」という記事を寄稿しましたが、もう一度。
この制度、本当に「ほぼノーリスク」なので、現時点で60歳以上の有能な従業員を抱えている会社さんには、ぜひ申請をお勧めしたい助成金です。
本助成金の内容をおさらいすると、現行の制度(現行の制度とは、現在、各会社の就業規則で定められている制度を言います。)を上回る制度を導入し、かつ下記のいずれかの制度を導入した場合に、下記の金額の助成金が支給されるというものです。
- ①65歳への定年の引上げ:100万円
- ②66歳以上への定年引上げまたは定年の定めの廃止:120万円
- ③希望者全員を66~69歳まで継続雇用する制度の導入:60万円
- ④ 希望者全員を70歳以上まで継続雇用する制度の導入:80万円
金額の大きさだけ見ていただいても、非常に魅力的な助成金だとご理解いただけると思います。
では、なぜ「65歳超雇用推進助成金」にはリスクが殆ど無いのか?今回は、この点についてお話ししたいと思います。
65歳絡みの雇用形態には2つのパターンがある
現在、高年齢者雇用安定法により、会社は労働者を65歳まで雇用する義務が課せられています。
65歳までの雇用義務を満たす方法には、
- 定年年齢を65歳以上又は廃止にする
- 定年年齢が60歳で定年後、再雇用し65歳まで継続雇用する
という2つのパターンがあり、どちらの形態を取っても法律の基準を満たすこととなります。
では、「定年65歳」と「定年60歳で65歳まで継続雇用」の違いについて、簡単にご説明したいと思います。
まず、定年が65歳の場合には、賃金等の労働条件を基本的には65歳まで同条件で雇用する必要があります。(もう少し正確に言えば、65歳まで年齢を条件に労働条件を低下させることができません。)
それに対して、定年60歳で65歳まで継続雇用の場合は、あくまで定年は60歳なので一旦、60歳の時点で雇用契約が終了します。そして、定年の翌日から再雇用等の継続雇用がされることとなります。
ですから、60歳の時点で労働条件を変更できる権利が会社側にあると考えられます。
元々、法律では、同条件で65歳までの雇用義務を課しているわけではなく、求めているのはあくまで雇用の維持ですので、「定年60歳で65歳まで継続雇用」のような制度であっても、法律の基準は満たしていることとなります。
上記を前提として、65歳超雇用推進助成金が、なぜ中小企業にとってリスクが少ないかについて、2つのケースを基にお話ししたいと思います。
定年年齢が65歳の場合:定年延長は最低60万円の助成金対象へ
最初に、現行の制度が定年年齢が65歳の場合について考えてみたいと思います。
もし、「定年以降も労働条件を変えずに、一定期間雇用しても良い」と考えるならば、助成金の対象となってきます。
定年年齢を66歳から69歳までの間に延長するならば助成額は100万円で、70歳以上に定年年齢を延長する場合は120万円となります。
また、定年以降は同条件での雇用は難しいけど、労働条件を下げての雇用であれば可能ならば、こちらでも助成金の対象となってきます。
雇用継続の上限年齢を66歳から69歳までの間に延長する場合の助成額は60万円で、雇用継続の上限年齢を70歳以上に延長する場合の助成額は80万円となります。
つまり、同条件雇用するかどうかは別として、「従業員には、働けるだけ働いてもらいたい」と考えるならば、何らかの形で助成金を受給することが可能と言えます。
定年が60歳で65歳まで継続雇用:こちらも最低60万円の助成金対象へ
1つめのケースとして現行の制度が、「定年が60歳で65歳まで継続雇用」のケースでお話ししたいと思います。
この場合、65歳超雇用推進助成金を受給するためには、定年を65歳以上に延長するか、継続雇用の上限年齢を66歳以上にする必要があります。
仮に現在、58歳の従業員を雇用しているとします。会社は、少なくとも65歳までは、本人が希望すれば何らかの形で7年間その従業員を雇用し続ける必要があります。
問題は、この労働者が65歳になった時点で、会社が雇用契約を終了したいと考えるか否かです。
中小企業の場合、豊富な経験や高い技術を持った高年齢労働者は、貴重な戦力と考えるケースの方が圧倒的に多いと言えます。
実際、65歳超雇用推進助成金を提案する際には、定年を間近に控えた労働者に対して、「働けるだけ働いて欲しい」とおっしゃる経営者の方がほとんどです。
現行の制度が65歳までの継続雇用であっても、多くの経営者の方が65歳以降の雇用に対して、ほとんど抵抗感を持っていないのが実情と言えます。
となれば、継続雇用の上限年齢を延長することに関して、リスクはほとんどないと言えます。
つまり、65歳超雇用推進助成金は、多くの中小企業にとってはノーリスクに近い形で、助成金を受給することが可能と言えます。
あとは、受給額の違いです。
継続雇用の上限年齢を、66歳から69歳までの間で延長する場合には60万円となり、70歳以上に延長すれば80万円となります。
また、「60歳以降も賃金等の労働条件を低下させずに雇用しても良い」とお考えならば、定年年齢を65歳から69歳までの間に延長すれば100万円となり、定年年齢を70歳以上に延長すれば120万円となります。
労働人口の減少で人材不足の状況は更に深刻化
ところで近年、労働人口の減少により、特に中小企業にとって深刻な人材不足の状況が続いています。
実際、私も多くの経営者の方から、「人が集まらない」といった話を聞きます。
ある新聞に書いてありましたが、このような状況は今後20年近く続くそうです。
そもそも定年年齢が定められる理由の1つに、若年労働者の雇用確保があります。
しかし、その若年労働者の確保が困難な状況で、高年齢労働者の退職年齢が現状維持のままであれば、当然ながら人材は先細りとなってきます。
高年齢労働者の一層の活用は、助成金の活用とは全く別次元の現実的な問題として、今後の経営戦略においては避けては通れないものと言えます。
ただ、現時点で支給要件を満たしているかどうかの判断は非常に難しいところがあるため、まずは社労士など労務の専門家に該当性をヒアリングすることをお勧めいたします。