2016年のインフルエンザは、かなり手強そうです。東京都の発表によると、都内のインフルエンザ定点医療機関からの第46週(11月14日から11月20日)の患者報告数は、既に流行開始の目安となる定点当たり1.0人を超えています。本稿は、今年のインフルエンザ傾向と企業が事前に実施すべき3つの対策をお伝えします。
2016年冬のインフルエンザはかなり手強そう
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを原因とする呼吸器感染症のことを指し、おおむね1~3日の潜伏期間後に、発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咳、鼻水などの症状が現れます。
いわゆる風邪によく似た症状ですが、風邪と決定的に違うのは、局所的ではなく全身に症状が表れる傾向が強い事です。
また、38度以上の高熱が出る事が多く、中には急性脳症や肺炎を引き起こし、死に至る原因となる場合もあります。
2016年のインフルエンザ発症状況ですが、実は9月の時点で既に、東京や千葉などの小学校で学級閉鎖になったことが報告されています。
9月と言えば、まだ残暑も厳しい季節で、この時期にインフルエンザが流行ることは誰もが予想だにしていない状況です。
実際、インフルエンザの予防接種を医療機関が開始するのは例年10月以降殆どであり、この時期に感染者が出るのは異常な話。
上記の事例では、インフルエンザに弱い児童だけではなく、大人の教員が感染していることも報告されています。
こうしたことから、今年のインフルエンザは早い時期から流行することが予想されていました。
実際の調査でも2016年10月最終週から患者数が急増していることが判明しています。
患者数で確認すると、2015年の同じ時期に比べて4.7倍に増えていて、例年より流行の拡大が懸念されています。
また、東京都内のインフルエンザ定点医療機関による第46週(11月14日から11月20日)の患者報告数は、流行開始の目安となる定点当たり1.0人を超えています。
2016年に流行が予想されるインフルエンザの型
次に、今年流行するインフルエンザウイルスの種類について、ご説明しましょう。
インフルエンザの季節性と呼ばれるウイルスは、
- AH1pdm09
- AH1亜型 (Aソ連型)
- AH3亜型 (A香港型)
- B型
の4種類にわけられます。
どのタイプのウイルスが流行するのか、流行する時期や症状はその年によって変わってきます。
2016年11月現在、最も流行しているのは、AH1pdm09とAH3亜型の2種類のウイルスです。
AH1pdm09は2009年に大流行した新型インフルエンザウイルスの事で、現在はワクチンも作られてA型の一種として扱われています。
症状もA型と同じで、高熱や倦怠感、筋肉痛が主な特徴です。
AH3亜型は1968年に大流行したタイプで、こちらも今はA型の一種として扱われています。
症状は他のA型と大きな違いはありませんが、5歳未満の子どもに感染しやすいとされており、小さいお子さんがいる家庭では特に注意する必要があります。
今年は、現時点までにB型に関する流行情報は出ていませんが、毎年A型の流行が落ち着いた1~3月頃に感染が拡大する傾向があります。
A型に比べて症状が軽いと言われますが、腹痛や嘔吐、下痢などの消化器系の症状が現れます。
一度感染すると免疫がつくと考えられていますが、人によっては1シーズンでA型に感染した後にB型に感染してしまう人もいるため、気温が寒い季節の健康管理をしっかり行う事が大切です。
企業が事前に取っておくべき3つの対策とは?
インフルエンザは、体力のない子供や高齢者が感染すると重症化する恐れがあるので、本当に注意が必要です。
また、体力があったとしても、社員間で感染が拡大すると企業の死活問題になり兼ねません。
そのため、インフルエンザが流行する前から企業単位でしっかりインフルエンザの感染対策をとる必要があります。
ここからは、企業が事前に取っておくべき3つのインフルエンザ対策をご紹介します。
1)うがい手洗い・予防接種などの事前対策
まずはインフルエンザに感染しない予防対策が一番大事です。
手洗いやうがいを社員全体に推奨しましょう。
出先から帰社した際、昼食前、帰宅後にうがい手洗いを徹底させる事は、同時期に流行する胃腸炎対策にもなります。
また、「予防接種を受けても感染する時は感染するから」と受けない人もいますが、効果が全くない訳ではありません。
症状が重症化する事を防いだり、家族の誰かが感染したとしても予防接種を接種していたことで、自分は感染を防ぐというケースも考えられます。
費用がもったいないと考える社員のために、インフルエンザが流行する前に、企業の負担で予防接種を受けさせておくのも対策の一つです。
全員が予防接種を受けられる環境を整えれば、予防接種にかかる費用は福利厚生費として経費算入することが可能です。
2)感染時の出社停止に関する就業規則整備
次に、万が一インフルエンザに感染してしまった場合ですが、学校などの教育機関では「学校保健安全法」によって出席停止期限が定められているのに対して、会社員は会社法などで特に出席停止期限を決められていません。
インフルエンザは感染力が強く、我慢して出社したとしても周りの他の社員に感染させてしまう可能性が高い病気です。
従って、「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日を経過するまでは出社停止期限」等と就業規則等で定めておくことが賢明です。
さらに、社員の家族が感染した場合も注意する必要があります。
感染に気付かない間に周りに感染させてしまう事もあるため、家族に感染者が出た場合でも、1~4日の出勤停止を定めておくと万全の対策と言えるでしょう。
3)出社停止期間における休業手当の整備
約1週間の休みは企業にとっても、当の本人にとっても痛い問題です。
特に社員の中には、査定や賃金への影響を懸念し、無理して会社へ出社し、その結果二次流行を招くケースも考えられます。
こうなると社員の集団感染リスクが高まり、その結果経営に甚大な影響を及ぼす事も考えられます。
インフルエンザに羅患した社員についての就業制限は、企業側から「会社を休んでください」とお願いする事になるため、当然ながら休業手当を用意しましょう。
有給休暇制度を適用しようと考える人も中にはいますが、有給休暇制度は「労働者の請求する時期に与えなければならない」ことが法律で決められているので、企業側がインフルエンザを理由として、一方的に社員に有給休暇を取らせる事はできません。
こういった事が曖昧になると、社員は不安や心配でゆっくり休んでいられないため、インフルエンザなどの感染症の場合は休業手当があることをしっかり周知しましょう。
インフルエンザは予防対策へのコスト投下が一番の節約につながる
最後になりますが、インフルエンザ対策の基本と言えるのは何と言っても「予防」です。
予防に勝る対策は無く、予防のためにコストをかけることが、最終的には企業の節約に繋がります。
社員に感染症が広まってから対策を取ろうとしても、実際のところはとても難しいものです。
被害を最小限に抑えるためには、インフルエンザについていち早く情報を知り、適切な予防対策を取ることを事前に行っておくことが大切です。
本格的な流行拡大に備えて、しっかり今から準備をしておきましょう。