電話は、即座にコミュニケーションが取れるという優位性を持つツールであるがゆえに、長らくビジネスの現場で重宝されてきました。
しかし電話は、相手の時間を強制的に奪うというデメリットも持っており、電話をできる限り使わない企業も出てきています。
チャットなどのコミュニケーションツールを、上手くミックスして利用することで、業務の大幅な効率化を図ることが可能なのです。
固定電話を会社に置かない企業が増えている
一昔前ならビジネスコミュニケーションの手段は、電話かEmailしか選択肢がありませんでした。
特に電話には、即座にコミュニケーションが取れるという優位性があり、長くビジネスの現場では重宝されてきたのです。
しかし、昨今のITスタートアップでは「固定電話を設置しない」という企業が増えてきています。
会社の机といえば、PC・電話・引き出しが3点セットというイメージがありますが、PCはモバイル(ノートパソコン)が主流になり、フリーアドレス制の場合は、ロッカーになり引き出しがついていない机が主流になりつつあります。
更には、最後に残った電話までも置かない企業が増えています。
そこで本稿は、なぜ電話を使わない企業が増えているのか?同期コミュニケーションツールが発生させる「無駄」の観点から解説したいと思います。
固定電話を会社に設置することのデメリット
同期コミュニケーションと非同期コミュニケーション
まず、「同期コミュニケーション」と「非同期コミュニケーション」が、どのような意味を持つかご紹介しましょう。
電話など、双方の時間を同時に拘束するコミュニケーション手段は「同期コミュニケーション」と呼ばれます。
それに対して、Emailやチャットなどは同時性を重視していませんので「非同期コミュニケーション」と呼ばれます。
電話とEmailしかない時代においては、電話という同期コミュニケーションの持つ即時性は圧倒的だったのですが、必要以上にコミュニケーションの同時性を強要するという事態が生じました。
電話は相手の時間を強制的に奪う
同期が必要のないものまで、電話というコミュニケーション手段をとることで、相手の時間を強制的に奪ってきたのです。
たとえば、電話は便利な反面、双方の時間を拘束し、色々なタイミングで割り込んでくるという特性があります。
電話会議でもない限り「午前11時に電話をかけます」などという事前予告はまずありえません。電話は突然かかってくるものです。
その突然かかってくる電話を取るために、オフィスには電話を取る人がいて、伝言メモで折り返しの依頼をして、というビジネス慣習まで生まれました。
しかしよく考えてみてください。これにかかる人件費や通信費用などの固定費は膨大な額に及びます。
ビジネス慣習の見直しを
スマホやチャットが普及していない時代には、それが最適なやり方だったのかもしれません。
ところがインターネットの台頭によりビジネスは加速度的に進歩しており、このビジネス慣習(電話中心のコミュニケーション)は、根本から見直さねば、企業の収益を無駄に大きく圧迫し、効率化を阻害する代物となりはじめているのです。
これが前述の通り、ITスタートアップの企業で、電話を置かない企業が増えている理由です。
固定電話の代わりはチャットツール。その効率化への威力とは?
これまでメインのコミュニケーションツールだった電話の代替手段となっているのが、チャットやメッセンジャーなどのテキストツールです。
今や非同期コミュニケーションと言えば、チャットツールのことを指すようになりました。
slackやChatWorkに代表されるチャットツールが便利になり、スマホが圧倒的に普及した今となっては、電話の「双方の時間を同時に拘束する」という特性が、むしろビジネスのスピード感を阻害するようになっています。
「固定電話を設置しない」という選択肢は非常に怖いと思うかもしれませんが、これを実行した企業からはむしろ、
「これまでいかに電話に無駄な時間を取られていたかがよく分かった」
「コミュニケーションには何の問題も生じていない」
という声が圧倒的に上がっています。
非同期コミュニケーションを成立させる大前提は、「即時性を相手に求めない」ことを、コミュニケーションを取り合う双方がきちんと認識しておくことです。
本当に緊急性が高いものについては、未だに電話を使う必要がありますが、そこまで緊急性があることはビジネスの現場では頻繁には起きていないのではないでしょうか。
電話というのは最終手段、という前提でお互いに非同期コミュニケーションを活用すれば、相手が後で見ることを意識して丁寧に記載するようになりますし、関連する情報なども事前にきちんと整理してから投稿するようになります。
もちろん、チャットはディスカッションやブレインストーミングには不向きです。
そういう同時性の要求されるものは、実際に顔を合わせて会議室でやる必要がありますが、それは電話があってもなくても同じことです。
非同期コミュニケーションといっても、すべてを非同期でやるということではないのです。
「電話を基本的には使わない」というコミュニケーションスタイルになってみると、今までいかに電話によって時間を奪われていたのか、ということがよく分かります。
トラブルが起こっていたり、今すぐに必要性がある場合はもちろん電話を使いますが、そのような場合、固定電話ではなく本人の携帯電話にかければ済む話です。
内線電話などは、むしろ全てチャットに代替可能です。
チャットツールは個々に責任感をも生じさせる
非同期コミュニケーションを前提とすることは、「これはチャットでいいのか、それとも顔を合わせて打ち合わせをした方がいいか」ということをプレイヤーがきちんと考えるメリットをもたらします。
ただ、数字を読み上げるだけの会議など顔を合わせてやる必要は全くありません。事前に数字を共有しておき、顔を合わせた場ではお互いにディスカッションをすることも可能になります。
また、非同期コミュニケーションでは、「情報を見落としたやつが悪い」というお互いの認識を通じて、プレイヤー個人の責任を明確なものとしたコミュニケーションが前提となります。
投稿する側にも、もちろん相手がなるべく見落とさないように工夫をする必要はありますが、基本的には投稿された内容はザッとでも相手が目を通している前提で、コミュニケーションを進行させねばなりません。
同期が強要されない分だけ、ここの前提条件はとても重要です。
いまだに年配の方々には「事前の連絡や資料にほとんど目を通してくれない」人もいらっしゃいます。
それでは今の時代のスピード感についてこれませんし、そういう人たちに合わせていつまでも電話という同期コミュニケーションを中心にしていては無駄が多すぎます。
「同期コミュニケーションには無駄が多い」ということを認識した上で、業務上のコミュニケーションを根本から見直すタイミングに来ていることを、ぜひ皆様にも知ってもらえれば嬉しく思います。