ご存知ですか?家内労働者等の必要経費の特例
ピアノの先生や保険の外交員、シルバー人材センターなどの職業で得る収入は、あまり経費がかかりません。
このような収入はお給料ではないので、ある程度の収入がある人は、確定申告をする必要があります。
この時にせっかく得た収入のほとんどが、税金で持っていかれるでは損です。
そこで本日は、このようなお仕事の方向けに設けられている特例をご紹介したいと思います。
以下、ご説明いたします。
特例の適用で最高65万円まで損金算入が可能
個人の方が仕事で得る所得は、基本的に収入から必要経費を差し引いて計算をします。
必要経費を参入するには、実際にお金を払っていることが原則として求められます。
ただ、「実際にお金で払ったものではなく、ある程度までは経費にしていいよ」という特例があるのです。
それが「家内労働者等の必要経費の特例」(所得税の租税特別措置法27条)という特例です。
この特例の内容とは、実際にかかった必要経費が65万円未満であった場合には、最高65万円までは必要経費として認めてくれる制度なのです。
必要経費が65万円未満であれば、使っていない金額であっても、経費として認めてくれる特例なのでオトクですよね。
特例適用には一定の要件を満たす必要がある
その要件とは「家内労働者等」というものに該当することになります。
家内労働者とは、読んで字のごとく「家の中で働く人」=「内職さん」を前提としています。
ただし、これでは限定的すぎるので、家内労働者「等」ということにして、少し枠を広げているのです。
法律の定義としては、
「家内労働者等とは、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の人に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人」
として表されます。
この要件に該当するためのポイントは、
- ① 特定の人を対象としている
- ② 継続的に行っている
- ③ 販売ではなくサービス(人的役務)である
という3つの要件を満たしているか否かが重要になります。
ヤマハの先生はOKで自宅で教える先生はNG?
具体的に①の要件の例で考えてみましょう。
①の要件は、「特定の人に」と言う部分がポイントになり、サービスの提供者が特定されていれば提供先が複数でも大丈夫です。
逆に言うと、不特定多数の人を対象としたサービスを提供する場合にはNGなのです。
例えば、弁護士、税理士のように事務所を開いていたり、学習塾で広く生徒を集めたりしているような場合には、不特定多数の人向けにサービスを提供しているので、この特例は受けられません。
結果論として、一定の人にしかサービスを提供していなくても、事務所やお店を持っている段階でNGになってしまうのです。
同様に、自宅の一室でピアノの先生をしている人についても、「自分の教室」を持っているということになるので、この特例は適用できません。
いろんなところから生徒を集めているので、特定とは言い切れないからなのでしょうね。紹介制だからと言っても、通用しないのが現実です。
しかし、同じピアノの先生ですが、ヤマハ音楽教室の先生ならこの特例が適用ができます。(ちなみにヤマハの先生は個人事業主です。お給料ではないんですね)
ヤマハなどの大手音楽教室などの場合には、「ヤマハ」という特定の会社に対してサービスを提供しているということになるので、この特例が使えるということなのです。
同じような仕事をしているのに、サービスの提供先ひとつで、特例の適用が叶うか否かは、大きく変わってしまうのです。
参考までに、この特例の適用を受けられる業種のうち、代表的なものをご紹介しましょう。
- 内職さん
- 電力会社などの検針員、新聞やNHKの集金、ヤクルトのおばさん
- 特定の会社に所属しているピアノ講師
- アファリエイター、ユーチューバー
- 特定の生命保険や損害保険の外交員
- webデザイナーや翻訳など特定の会社から下請している人
- レースクイーンや専属モデルさん
いずれも「特定の人に」「継続して」「サービスを提供する」というところがポイントです。
給与所得と併用できないケースもあるので注意
ちなみに「家内労働者等の必要経費の特例」が、お給料から控除できる「給与所得控除」と重複して利用できるのは、両方合わせて65万円までが上限となっています。
例えば、お給料収入が80万円ある人は、お給料の方で給与所得控除65万円を使い切ってしまうので、家内労働者の特例は利用できません。
お給料収入が40万円であれば、65万円-40万円=25万円までは家内労働者の特例を利用することができます。
その他にも、例えば雑所得の必要経費がある場合なども、特例の利用が制限されます。
公的年金以外の年金(生命保険の個人年金など)の所得計算をする際、収入金額ー必要経費(既払込保険料)などの計算をするのですが、その際に計上した必要経費が65万円を超えてしまえば、この特例は利用できません。
シルバー人材センターなどで働く高齢者の方には、良くあるケースです。気をつけないと間違えてしまいますので、給料がある場合には注意しましょう。
特例は青色申告特別控除との併用も可能になる
ちなみに、この家内労働者の特例は、青色申告特別控除(10万円or65万円)と併用することも可能です。
帳簿をきちんとつける、総勘定元帳を作るといった青色の要件を満たせば、最大で家内労働者特例65万円+青色申告特別控除65万=130万円まで控除することもできます。
10万円控除なら比較的簡単に適用できますので、小規模の事業や副業ビジネスの方なら、特例を使うメリットは大きいかも知れませんね。
「知らなくてソンした~(ToT)/」と言う方も、申告期限から5年以内であれば、再度申告(更正の請求)をすることも可能です。
思い当たる方は、ぜひ過去の申告書を見直してみることをお勧めします。