フランスでテロ事件が起こり未曾有の被害が広がっています。いかなる理由があろうともテロ行為は、人間が人間に対して行う究極の暴力であり、許されるべきものではありません。しかし現代の企業活動はこのような事件が起こるリスクと闘いながらも、海外へ打って出る必要性が非常に高まっています。万が一海外へ派遣した社員がテロ事件に巻き込まれることを考えた労災保険の加入は企業の責務です。
パリでテロ事件発生 企業は社員をどう守れる?
パリ中心部と近郊で先週末13日の夜に、劇場やレストラン、競技場など6カ所を狙った自爆テロや銃乱射事件が同時多発で生じました。少なくとも120人が死亡、200人以上が重軽傷を負い、フランス史上で最悪のテロ事件となりました。
まず最初に、事件の被害者とご遺族の方々に心から哀悼の意を表したいと思います。
いかなる理由があろうともテロ行為は、人間が人間に対して行う究極の暴力であり、許されるべきものではありません。しかし現代の企業活動はこのような事件が起こるリスクと闘いながらも、海外へ打って出る必要性が非常に高まっています。
企業として海外へ送る社員がいる場合に、彼ら(人材)をどのように守るか?という部分について、様々なケースを想定して先に手を打つことは賢明です。
海外出張・派遣時のテロ遭遇と労災保険の適用
一般的に社員が海外で業務を行う際には、大きく分けて2つのパターンがあります。
- 海外出張
- 海外派遣
という2つのパターンです。
いずれかのパターンで社員が海外にいる時にテロ事件が起きて巻き込まれてしまった場合、彼らを労災保険で守ることは可能なのでしょうか?
まず、自社に籍を置いたまま海外出張(商談・技術習得・市場調査等)時に、社員がテロ事件に遭遇し巻き込まれたとしても、この社員に自社が加入している労災保険を適用することは可能です。
一方で社員の海外出向が、海外派遣に該当する場合は注意が必要になります。つまり海外の子会社に転籍させたり、支店へ出向させる、海外の取引先や提携会社に所属させたりする場合です。
なんとこの場合、海外派遣者は、自社が加入している労災保険の適用を受けることはできません。適用の範囲外になってしまうのです。
彼らを助けるためには、労災保険制度の「海外派遣者・特別加入制度」に加入しておく必要があります。
ただし加入できるのは、企業規模が以下のように小さい場合と限られています。
- 金融・保険・不動産・小売:労働者数50人以下
- 卸売・サービス:100人以下
- 上記以外:300人以下
事件が発生したなら社員はなるべく送らない
海外で活躍する企業の多くが、「労災保険」と「民間保険」とを組み合わせた労務管理を行っています。
しかし労災保険については、今回のパリテロ事件を例に取ると「業務遂行性」と「業務関連性」を満たしていないため、労災保険の適用を認められることは難しいのが現実です。
なぜならパリはもともとテロが多い場所とは一般的に考えられておらず、更に企業もテロが起こりやすい施設へ社員をわざわざ派遣したということは客観的に認められにくいからです。
現時点では日本人の被害報告はないものの、もしテロに巻き込まれた場合は民間保険の適用のみが認められることになる可能性が極めて高いのです。
ではどうすれば良いのか?答えは簡単で「絶対に行く必要がないならば、危険な地域へ社員を新規に派遣することはしない」ということに尽きます。
お金に変えられないのが人材です。フランスの場合も、状況を注意深く見守りながら、事態が沈静化するまでは極力社員の派遣を行わないことが、社員を守ることにつながります。