合同会社が近年増加しています。会社設立にかかる期間の短さや、費用面の安さといったメリットがあるため、この9年間で登記数は5倍近くに増えました。
また、外資の巨大資本も煩わしくて時間のかかる”現地固有”の労力やコストを削減するために、合同会社の形態を取ることが多いです。社会的信用と利益配分の問題がクリアできれば魅力的な会社形態と言えます。
合同会社の登記数は約10年で5倍増えている
合同会社(LLC)の登記数が増加しています。
総務省の統計データによると、
昨年の2014年に「合同会社」として登記した総数は、前年に対して34ポイント増加、件数にすると約40,000件
出典:総務省統計局
に上りました。
同じ時期の「株式会社」の登記件数は、およそ90万件だが、伸び率でみるとほぼ横ばいの結果です。
新会社法によって合同会社が定められた2006年当時、株式会社を設立した件数の割合が「9.6」とすると、合同会社は僅か「0.4」であった。
しかし、昨年には「8.1」対「1.9」まで迫り、9年間で、株式会社として起業した数は1倍強に留まる一方で、合同会社は5倍近く増えている計算となります。
外資系企業はなぜ合同会社を日本で作るの?メリットは?
合同会社導入の背景には、ニッポンの技術やノウハウ・アイディアなどを活用した、スモールビジネスの起業を後押しする狙いがありました。
合同会社は、株式会社と比較した場合、会社設立にかかる期間の短さや費用面の安さ、登記手続きの容易さが大きな特長です。
また、出資者の責任は有限としながらも、利益配分は自由に決められ、さらに、出資者みずからが業務を執行するため、柔軟で素早い意思決定ができるようになります。
合同会社の特徴を以下に整理してみます。
- 1人以上、資本金1円から会社を設立できる
- 定款に関連する手数料は不要。登記免許税6万円のみ
- 出資比率に関係なく柔軟に利益の配分を定められる
- 株主総会の設置は不要
- 資本金の額にかかわらず会計監査人監査が不要
- 決算公告の義務がない
- 経営破綻した際の責任は出資した範囲内(有限)とする
- 株式会社への組織変更が可能
アップルジャパン、P&Gマックスファクター、西友、ユニバーサルミュージックなどの、スモールビジネスではない巨大資本をもつグローバル企業たちが、ニッポン現地で相次いで合同会社に組織変更する理由は、意思決定のスピード化による経営効率はもちろんのこと、それ以外にも3つの理由あります。
1)登記変更コストを削減できる
1つ目の理由は、欧米のグローバル企業にとって登記変更は決してめずらしい出来事ではないからです。日本国内で「株式会社」の形態にすれば、登記変更のたびに”現地固有”の法制に適合させるため手続きが必要になります。そこにかかるコストは決してバカにはなりません。
2)日本の会計監査基準に合わせる必要がない
2つ目の理由は、合同会社は日本国内の会計監査人監査に合わせる必要がないことにある。例えば法人税を申告する際に必要となる、全世界の業績を集めた決算書を作成する手間も合同会社にすれば省くことが可能です。この費用、労力の負荷はとてつもなくも大きいため、不要になればコスト削減が可能となります。
3)本社にとってリスク回避策となる
3つ目の理由は、有限責任であれば、万が一、日本法人が倒産したとしても、本国の本社はその負債を負う必要がありません。しかし、現地法人の欠損を本社と合算させる処理ができないデメリットもあります。潤沢な資本を保有する巨大企業ならではのリスク回避策だ。
巨大グローバル企業にとって、煩わしくて時間のかかる”現地固有”の労力ほどムダなものはないですからね。
この先、消費の成長拡大が見込めない市場においては、合同会社を作ることが、現地の法律を上手く活用したクレバーな戦略と考えられているんです。
したがって、なにもアップルが「合同会社」を名乗ったから、今すぐ我々も「右へならえ」になる必要はどこにもありません。
スモールビジネス本来の成長のために、合同会社のメリット、デメリットをよくよく吟味する必要があります。
合同会社を設立する際の注意事項
登記数は増加傾向にあるとはいうものの「株式会社」と比べれば、合同会社は未だに世間の信用イメージが低いのが実情です。
特に法人との取引においてはなおさらです。
また複数人で起業する場合は、利益配分と業務執行の両面での信頼のおけるパートナー選びが重要になるなど、合同会社という形態そのものが、事業の成功を約束しているわけではないです。
これら2つの問題をクリアすれば、合同会社は、個人事業主や起業家にとって十分に魅力ある形態ですので、欧米の巨大グローバル企業よりも、もっと多くの恩恵を受けられます。
すると、残る壁は今までの慣習。置き去りにされた慣習を大切に守るか、それとも自ら望んで打ち壊すのか。
貴方にとってビジネスを促進するためにプラスであれば、合同会社を設立することはそれほど難しい選択ではなさそうです。
参照元:総務省統計局