ドクターシーラボ、ジョンソン・エンド・ジョンソンへの身売りを発表
先月末、ジョンソン・エンド・ジョンソンが、ドクターシーラボをTOBで買収することを発表しました。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは国内で比較的高価格帯の化粧品の販売実績が乏しく、これを実現しているドクターシーラボを欲しいとのこと。
ドクターシーラボは海外進出を進めていましたが、いまひとつ結果が出ていないところ、ジョンソン・エンド・ジョンソンの商流を使うことによって、それを補えるはずということです。
ドクターシーラボの身売りがTOBの理想的な形といえる2つの理由
TOB(take-over bid)とは、ある株式会社の株式の買付けについて、「買付け期間・買取り株数・価格」を公告し、不特定多数の株主から株式市場外で株式を買い集める制度のことを言います。
TOBを実施する企業は、既存株主にメリットがあるように、今の時価総額にプレミアムを乗せて買収することで、迅速にM&Aを実施できるメリットがあります。
一方でプレミアム価格で企業買収に乗り出すため、買収時点で「高づかみ」をする可能性をデメリットとして踏まえなければなりません。
つまり、現在の株価を大幅に上回るメリットがないとTOBによる企業買収には価値がないのですが、今回はプレミアムを十分回収できる可能性があります。
一番大きいメリットは、ドクターシーラボの高単価商品を、ジョンソン・エンド・ジョンソングループの商流に乗せて海外販売ができることでしょう。
これは純粋に業績の上振れ要因になります。
続いてマーケティング面でもジョンソン・エンド・ジョンソンはメリットを享受できます。
ドクターシーラボの高単価商品は、ひとえにマーケティングに力をいれているからこそ成り立つものです。
一方でジョンソン・エンド・ジョンソンは、世界中に販路を持つ企業であり規模の経済を持っています。これは相当な効果があるはずです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのドクターシーラボTOBにはシナジーが生まれる
シナジー効果を想定するのは簡単なことですが、実際に具体的なイメージも無いのに、雰囲気で判断されていることも少なくありません。
今回のTOBは、経営トップがイメージし、現場で積み上げで試算をする。おそらくはそういったあるべき買収プロセスの中で、ガッツリ統合効果を見込めている案件なのでしょう。
現場では絵に描いた餅ではなく、上記をベースにした統合効果を積み上げてしっかり算定しているはずです。
というのも、本件は既に20%の株をジョンソン・エンド・ジョンソンが持ち、業務提携も進んでいる中で行われます。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、実際にドクターシーラボのビジネスの中身も見ており、統合効果が見込めるとみて間違い無い、と判断したのでしょう。
ここ数年、金余りを背景に「なぜ?」というM&Aが目立っている中、今回のTOBによるM&Aはお手本となる一例かと思います。