起業する人の半分以上がシニア層の50〜60代
私のライフワークは、これらシニア起業を応援することですが、50代、60代のシニア層の起業が多くなっていると肌で感じています。
実際、今から40年ほど前の1979年には23.7%だった50代・60代の起業が、2012年には51.8%に達し、起業する人の半数を占めるに至っています。
このように多くなっている50代、60代の起業ですが、この年代層の起業には、他の年代にはないような落とし穴があります。
そこで本稿は、シニアが起業する際に陥りやすい「5つの落とし穴」をご紹介します。
第1の落とし穴:会社の看板や肩書がなくなることへの自覚
会社員時代には、会社の看板を背負って仕事をしています。しかし、起業したら会社の看板や肩書は関係ありません。
会社員時代が長かったシニア層には、この自覚が乏しい人が多くいます。
会社員時代のプライドを捨てきれない人もいます。起業したら、このようなことは邪魔になるだけです。
「自分は◯◯社で部長をやっていたので〜業界の人脈がある」ということを、声高らかにアピールするのは良いですが、大事なのは今何ができるかです。
今までは組織を通しての仕事でしたが、起業したら個人として仕事に取り組みます。生の自分の人間性だけで勝負しなければなりません。
これがシニア層の起業の大きな落とし穴の1つ目です。
第2の落とし穴:自分がやってきた仕事への固執
シニア層ほど、自分がやってきた仕事のやり方に対して固執する傾向が強いと言われています。
起業して仕事をする場合、その仕事だけをやっていれば良いというわけにはいきません。
これに付随する仕事も全部自分でやらなければなりません。
また、今までやってきた仕事のやり方がそのまま通用するとは限りません。もっと効率的なやり方が求められる場合もあるでしょう。
今までの仕事や仕事のやり方の固執すると、柔軟な対応や新たな可能性への対応にできなくなります。
これもシニアが起業する場合の落とし穴になります。
第3の落とし穴:自分の体力への過信
起業したならば、今後はその仕事を何年も続けていくことになります。
今は体力があったとしても、それは年齢とともに衰えていきます。このことを十分に考慮しておくことが必要です。
自分にとって最大の敵は、慢心する自分です。
常に身体のチェックを怠らず、現状の体力を踏まえた働き方、リスクのとり方がシニア起業には求められます。
第4の落とし穴:社会感覚や時代感覚のズレ
同じ会社に長く仕事をしていると、知らず知らずのうちに、その会社の考え方や価値観に染まっており、社会感覚や時代感覚との間にズレが生じている場合があります。
代表的なところだと、一生懸命働けば給料が上がった年功序列の時代に生き、成功した人は、とかく取引先にもこれを求めます。
しかし、今の社会では年功序列が崩壊し、仕事も短時間で成果を上げられる人の評価が高くなっています。
このようなズレは、起業して初めて気が付くことが多いのです。
会社の看板や肩書がなくなることへの自覚が乏しい人ほど、自分を変えることができず、ズレを解消することができません。
第5の落とし穴:老後資金をすべてつぎ込んでしまう
退職金をもらった場合、最初からこれをすべて起業につぎ込んでしまう人はほとんどいません。
大半の人が、老後の生活のためのお金は別にしておきます。
しかし、思うように売上げが上がらないと、足りなくなった運転資金を補填するために老後のための資金をつぎ込んでしまう人が多いです。
気が付いたら、全てがなくなってしまったというケースも耳にします。
シニアになってから、“want to”で始めた人ほど思い入れが強く、サンクコスト(埋没費用)に対して見切りを付けられない傾向があります。
過去に囚われず今と向き合えば落とし穴にはまらない
このように、シニアの起業には色々な落とし穴がありますが、これらの落とし穴を事前にしっかり自覚しておけば、落とし穴に落ちることはありません。
子供の頃を思い出してください。落とし穴の場所が分かっていれば落ちることはありませんよね。
また、落とし穴の多くは、自らの経験や勘を元にした思い込みや勘違いから生じます。
大事なのは今です。自分が何歳であっても、過去に囚われず今と向き合えば、人は充実した時間を過ごせるようになります。