会社を辞めることを決意したAさんは、転職活動をゆっくり始めながら、良い転職先が無ければ前から温めていたアイデアを生かした独立も検討し、暇な時間に事務所を探したりもしています。このような状態にある時、Aさんは失業保険をもらうことが可能なのでしょうか?判断には「自営を開始または自営の準備に専念する人」か否か、という基準を知る必要があります。
転職先を探して独立も狙い失業保険を貰えるか?
2017年3月の完全失業率は2.8%で、引き続き売り手市場が続いています。
会社を辞めてもすぐ転職先が見つかりそうですが、だからこそ慌てずに失業保険をもらいながら、ゆっくり次の転職先を決めようと考える人も多いようです。
失業保険は、何らかの理由で会社を辞めた際、次の働き口が見つかるまで一定の所得を保障してくれる制度です。
新しい会社への就職が決まったり、自分で事業(個人事業や自分で会社を設立など)を始めると失業保険はもらえなくなりますが、一定の要件を満たせば再就職手当という“お祝い金”のようなものも貰えます。
さて、失業保険をもらっている人の中には、転職先を探しつつ、見つからない場合は独立しようかと、「二兎を追う」人もいるでしょう。
このような場合、どうやって上手く失業保険と付き合っていけば良いのでしょうか?
起業を準備しているか否か。判断の付け方は?
以前は起業を準備している段階でも、「自営を開始または自営の準備に専念する人」になり失業保険の給付対象外でした。
しかし、2014年からは、事業許可取得のための申請手続や、事務所賃借のための契約手続等の諸手続を行っているに過ぎないような場合は、就職活動と両立できるということで給付がOKとなりました。
ただし、起業を準備している人の中でも、より具体的に、事務所や店舗を借りて内装等をしていたり、会社を設立したような場合には、自営に専念すると判断されて給付NGです。
仮に会社に就業しているうちから独立を考えているとしましょう。
就業中から個人事業主として副業を始めている、独立後すぐ活動を始められるように会社を作っておく、といった行動をとりがちですが、辞めた後に失業保険をもらいたのであれば全てNGとなります。
独立を検討しているなら、失業手当をもらえる境目の活動については、きちんと把握しておくべきです。
ごまかすとペナルティ〜マイナンバーが後押し
ちなみに、書類をごまかして失業手当をもらおうとすれば、これは不正受給となってしまいます。
特にマイナンバーが始まった現在では、バレる要素がたくさんあります。
不正受給が見つかればすでにもらった分を全額返却し、かつその2倍のペナルティを支払わなければなりません。
たとえば、受給金額が50万円とすると、150万円を支払う必要があります。そのうえ年5%の延滞金までつき、悪質な場合には詐欺罪での告発もあります。
ちなみに、会社員の副業で多いものというと不動産収入や株・FX取引がよくあげられます。
会社を辞めて転職活動中でも、これらの取引で個人的な収入があると失業保険を受けられなさそうですが、実は問題なく受け取れます。
受給NGの対象となるのは、労働の対価としての収入がある場合で、これらは不労所得(労働の対価ではない)ではないからです。
しかし、会社を作ってその会社名義で不動産事業や株取引を行うと、会社の設立自体が自営の準備に専念する行為とみなされ、受給資格が無くなることになります。
会社でやるのか?個人でやるのか?境目に十分注意が必要でしょう。