企業としての新たなチャレンジには必ず出費が伴います。これを後押ししてくれるのが補助金・助成金です。しかし、返済義務の無い2つの支援制度は、付き合い方を間違えると、企業にとってマイナス作用を生み出す元凶ともなります。そこで本稿は、補助金・助成金と上手くつきあうため念頭におく2つの方針をご紹介します。
補助金・助成金は付き合い方でマイナス作用を生み出す
新商品の開発、新たな市場への挑戦、雇用拡大など、何かにチャレンジする際にはそれ相応の出費が伴うものです。
そのような時に資金面で後押しをしてくれるものとして、補助金・助成金が存在します。
使えるものは是非使っていただきたいのですが、今回は「〇〇補助金の取り方」のような内容をお伝えしたいのではありません。
というのも、補助金・助成金は付き合い方を間違えると、企業にとってマイナス作用を生み出す元凶となります。
そこで本稿は、補助金・助成金と上手に付き合うため念頭におきたい、2つの方針をご紹介します。
補助金・助成金と上手くつきあうため念頭におく2つの方針
1)短期の資金繰りに組み入れない
初歩的な話ですが、補助金と助成金の違いからご説明します。
補助金は主に経済産業省管轄、政府が経済的にテコ入れを行いたい産業等に対して補助を行うものです。
補助金は採択されて初めて確定するものであり、申請しても必ずもらえるお金ではないことを抑えておきましょう。
次に、助成金ですが厚生労働省が管轄であることから、人(雇用)に関するものに対して補助を行うもので、原則として要件を満たしていれば、申請することで給付を受けられます。
つまり、補助金との最大の違いは、要件さえ満たしていれば100%支給を受けることが可能だということでしょう。
さて、補助金でよくあるパターンに経費の2/3を填補します、という様なものがあります。
仮に新しい市場開拓のために75万円の支出が見込まれるとします。この75万円の2/3=50万円が補助金として支給されるという寸法です。
先に75万円の支出が発生しますので、補助金がなくとも耐えうる資金計画が必要です。
重複しますが、補助金は採択されない可能性もありますので、支給されなくとも問題ないような計画にすべきことは言うまでもないでしょう。
助成金についても申請から半年~1年後の支給となる場合が殆どです。余裕のある資金計画を策定しておきましょう。
2)支給金額の50%はなくなるものと考える
貴方の会社がどの程度の規模かにもよりますが、零細企業の場合、バックオフィスの人材に余裕は無いでしょうから、申請書類を自社で策定するのは難しい場合も多いかと思います。
そのような場合には、中小企業診断士や社会保険労務士などに申請をアウトソーシングすることになります。
彼らに対して支払うコスト(委託報酬)は多くの場合、支給される補助金・助成金の額に対して15%~20%が相場となります。
さらに、支給額は「雑収入」として法人税等(個人事業主であれば所得税)の課税対象となります。
アウトソーシング費用と納税額を足すと、半額は手元からなくなると考えておくことです(実際にはもう少し残るでしょうが)。
1)で例示したケースですと、50万円が支給されるので手元に残るのは約25万円。たしかに、“無いよりは幾分マシ”といったところですが、50万円が丸々使えると想定していると、足元をすくわれることがよく理解できるでしょう。
補助金等の入金により気が緩み、冗費などで資金繰りを圧迫させることのないようにしたいものです。
他人のお金に対してはどうしても甘えが出る
最後になりますが、もう1つ。他人のお金に対して、人はどうしても資金管理に甘えた考えをもちやすくなります。
返済する義務がある銀行融資でさえ、一度お金を受け取ると「自分のお金」という錯覚を起こし、計画的にこれを有効活用しない経営者がいるのは現実です。
補助金・助成金は後払いとは言えど、返済義務のないお金ですから、もっとこの傾向が強くなりやすいもの。
たとえ、採択・受理されたとしても、補助金・助成金を活用する際は、自己資金を使うかのような意識を持つことを忘れないようにしましょう。