個人事業でも青色申告を行う場合は、複式簿記による帳簿記帳が必要になります。ところが、法人の場合だと複式簿記による帳簿をするとわかりやすい仕訳も、個人事業の場合はわかりにくいケースが存在します。もしも、個人事業で会計上わかりにくい部分に悩み始めたら、それは法人化のタイミングかもしれません。
個人事業も青色申告を行うには複式帳簿が必要
個人事業主が事業所得を青色申告にて行う場合には、複式簿記による帳簿記帳が必要です。
手間についてはほぼ法人と変わらないと言って良いでしょう。
しかし、個人事業の会計には多くの欠点が存在します。
そこで本稿は、個人事業だと掴みにくい会計の仕訳について説明したいと思います。
個人事業だと実態を掴みにくい4つの会計仕訳
1)法人のように給与を差し引いた利益が見えない
個人事業主は当然ですが給与を自分に支払うことはできません。
生活費を生活口座に振り込んだとしても「事業主貸」という、個人事業主特有の勘定科目で処理することとなり、経費にはなりません。
法人であれば役員報酬という形で経費を計上しますので、自分の取り分を除いた利益(営業利益)がどの程度か一目瞭然です。
2)所得区分の存在が邪魔
所得税はその収入の正確により所得を区分します。
つまり、
- 給与や賞与:給与所得
- 事業による所得:事業所得
- 不動産等の売買:譲渡所得
といった感じで区分けしなければなりません。
所得の種類に応じて課税方法がきめ細やかに設定されているので、一概に悪いものとは言えないのですが、全体としての収支がよく分からないという欠点があります。
一方法人はとてもシンプルです。
益金-損金=所得。
どんな収入であれ損益計算書のどこかに計上されます。
3)未払の所得税・住民税を費用計上できない
法人の会計では、その事業年度分の所得に課税される法人税等(法人税、住民税、事業税)は、未払経理することになります。
細かく分析するのであれば、四半期ごとに予測数値で未払を計上すると良いでしょう。
期末の仕訳
法人税等 ☓☓☓ / 未払法人税等 ☓☓☓
これにより、税引後当期純利益が計上できます。
個人事業主の場合、その年の分の所得税等を未払計上することはありません。
したがって、税引後の利益も分からないのです。
4)純資産の部がない(に等しい)
法人の貸借対照表には、純資産の部があります。ここにはザックリというと資本金と過去の累積利益(赤字)が計上されます。
ひと目でその会社の歴史が分かるわけです。
一方、個人事業主には純資産の部が存在しません。一応「元入金」という勘定はありますが、いまいちピンとこないのです。
個人事業の仕訳で悩み始めたら法人化のタイミング
上記の内容が分かる方であれば、既に会計の初心者ではありません。
是非、法人化を検討してみてはいかがでしょうか。
当然、法人化には色々と事前に検討すべきことがありますが、上記の内容が理解できる程度まで真剣に財務を勉強しているということは、事業がある程度軌道に乗っている可能性が高いと思います。