昨年4月に8%に増税された消費税が、来年再来年の4月には10%へとアップします。今回は景気条項(増税時に景気が悪ければ増税を見直す)がありませんので、必ず10%へ増税されることが確定されています。多くのメディアを見ると増税に反対する声が圧倒的多数です。にも関わらず富裕層や大企業へなぜ増税せず、むしろ減税するのか?という声が多くあがっています。税務の観点からプロがこの問題に答えてくれます。
消費税の増税は反対派が大多数を占めている
昨年4月に8%に増税された消費税。
当初は、今年10月から10%にアップする予定でしたが、来年(2016年)再来年の4月まで延期されました。
今回は景気条項(増税時に景気が悪ければ増税を見直す)がありませんので、必ず10%へ増税されることが確定されています。
さて、この消費税増税ですが、多くのメディアが実施するアンケートを総合すると、反対派が多数のようです。
私としても(消費税にかかわらず)税金は少額で済むに越したことはないのですが、消費税増税はけしからん!という記事は溢れかえっています。
そこで、「精一杯、消費税を弁護してみよう」という試みをしたら面白そうなので、本日はそんな趣旨で本記事を執筆してみたいと思います。
お金持ちは実はお金持ちでは無い事になってる
税金は「直接税」と「間接税」に大別できます。
直接税とは、個人に対する所得税や住民税、法人に対する法人税等のように所得(もうけ)に対して課税されるものです。
一方、間接税とは消費税が代表格でして、もうけに関係なく課税されます。
消費税はお金持ちでも貧乏な方でも同じ税率で課税される(=逆進性といいます)ため、不公平であるとの指摘が多いのですが、そうとも言い切れません。
所得税や法人税のような直接税には様々な節税策が用意されており、高所得者の中にはそのような節税策を駆使することにより、ほとんど税金を納めていない方も多く存在するのです。
そういった「“隠れ”高所得者」であっても消費はしますので、消費税を利用すれば、彼らに対してもれなく課税をすることが可能なのです。
もちろん、あまり消費をしない高所得者もいますので万能な対策ではありませんが、現時点では、高所得者へ課税するのに一番効率的な税と言えるでしょう。
法人税の税率を下げるのには理由がある
ここで、「いや、消費税を上げる前に法人税を上げればいいじゃないか。法人税は利益の出ている企業ほど多く取れるはずだ。事実、節税をしていても大企業は空前の好決算を出しているんだから、大企業から税金をもっと取れるじゃないか!」という疑問や反論を持たれる方もいるはずです。
しかしこれらの声に反する形で、法人税の税率は近年下げられていく傾向にあります。
感情論としては疑問や反論の声を理解できなくもないのですが、これにも理由があるということを知る必要があります。
皆さんも御存知の通り、インターネット技術の発達に伴いビジネスはグローバル化の一途をたどっています。
今や日本企業は、国内企業間での競争ではなく、全世界の企業と競争をしていかなければなりません。
世界には日本の法人税率に比べて税率が低い場所がたくさんあります。
まったく同じことをしていても、手元に残るキャッシュが少なくなってしまうのであれば、日本企業は国際競争力を失うこととなり、ひいてはそこで働く従業員の給与をカットする必要が出てくるのです。
日本が国際的に見て「税率」という切り口から有利な土地であれば、日本企業が生産拠点等を海外に逃がす必要もありませんし、海外企業の誘致も進めることができ、結果として日本の税収が潤うこととなるのです。
多角的な視点をどれだけ持てるか
以上、税務の観点から消費税の増税を精一杯、弁護してみました。
しかし、消費税の問題はあくまで単一的な観点から見るべき問題ではありません。
増税が日本のGDPにどれだけ影響を与えるのかというマクロ経済学の視点や、もっと歳出を抑えることにより小さな政府を目指すべきではないか?という財政学的な知識からの視点にも注意を払うべきです。
とても難しい領域の話ですが、自分自身で考えることを放棄してはいけません。
それこそ一部の頭の良い権力者たちの思い通りに、言いくるめられてしまうからです。
一人ひとりが自分の出来る範囲で興味を持ち、勉強していくことが大切な問題です。