もはや個人名や会社名で検索することは常識になっている。自分の名前や会社名を検索ボックスに入力すると、ワンクリックで過去の失態や、見られたくない過去、間違った個人情報が表示される場合もあるだろう。容量の上限がないインターネットという媒体は、便利であるが、個人の情報を永続的に奪っていく危険性もある。そこで注目されているのが「忘れられる権利」だ。
SNSの台頭で誰もが拡散被害者に成り得る
この数年、事件が起こると瞬く間にインターネットで、事件当事者に関する個人情報が流れるようになった。その背後には、SNSの生み出す爆発的な”拡散”がある。
震災のリアルタイム情報のように、知る必要があるからこそ拡散される情報もあるが、悪意を持った拡散、愉快犯的な拡散もある。中には事実に反する情報、いわゆる誤報が拡散されている場合もある。
読者の皆様は、自分が当事者「拡散対象」になることを想定されたことがあるだろうか?
今や個人名や会社名で検索することは常識になっている。例えば、初対面で会った後、相手の名前をインターネット検索したことのある人は多いはずだ。
自分の名前や会社名を検索ボックスに入力すると、ワンクリックで過去の失態や、見られたくない過去、間違った個人情報が表示される場合もあるだろう。
容量の上限がないインターネットという媒体は、便利であるが、未来、キャリア、人間関係、売上など多くのものを永続的に奪っていく危険性がある。
そこで今回これらの問題を解決するために唱えられている「忘れられる権利」について、ご紹介したい。
忘れられる権利がWebの世界で認められ始める
「忘れられる権利」とは、2012年にEUが一般データ保護規則案に明文化した法律の名称で、個人データ管理者はデータ元の個人から請求があった場合、当該データの削除が義務づけるという内容で、実際に施行されている。
この法案が整備された背景には、前年にフランスの女性がグーグルに対して、過去の写真を消去するよう訴訟を起こし、勝訴をおさめた経緯があり、EUが個人情報保護について大きな危機意識を持っているという事実がある。
これを元に、2014年にスペインの男性が同じくグーグルに対し、過去の自分の債務記録へのリンクを削除するよう求めた裁判では、この法令が制定された後だったため”人には「忘れられる権利」がある”と判断されグーグルへのリンク削除判決がスムーズに下りた。
ただし、この法令に真反対である「知る権利」「報道の自由」という権利も同様にある。どの立場で表現を見るかで、「見られたくない」「ペンは剣よりも強し」というさまざまな見解が生まれることは確かで、その都度議論を生じていることが現実である。
ヤフーの検索情報削除基準発表も新たな一手
こういった情勢を鑑みて、3月30日ヤフーが国内初となる、利用者から検索情報の削除要請があった場合、どのような基準で削除を検討するかを示す、”検索情報削除の新基準”を公表した。
情報元の属性や情報の性質により削除するかどうかを決定し、削除する場合の削除対象となる代表事例として、未成年者情報やいじめ被害を挙げている。
それ以外にも、個人の住所や電話番号などの情報も該当部分を削除する、という項目を設けた。そして例外的な緊急措置にあたる、リベンジポルノなどの性的な画像などに対しては、検索結果表示できないように対応するということも設定した。
自社サイトを運営している場合は、万が一にも検索結果に表示される情報(ページタイトルやディスクリプションなど)にヤフー新基準に該当する表示がないか確認しておこう。
なお、ヤフーの検索システムはグーグルの検索アルゴリズムを採用している。もし自身で情報を削除依頼する立場になった場合は、ヤフーとグーグルそれぞれの対応は不要で、グーグルの検索結果が削除になっているかどうかのみの確認で問題ない。