決算直前の節税対策、企業経営者の資金確保手段として、企業向け生命保険は有効な手段である。中でも近年脚光を浴びているのが、全額損金として帳簿計上可能で、税金の圧縮と資金確保について優れた機能を持つ逆養老保険だ。本記事では、当該保険のメリット・留意事項を探る。
逆養老保険とは
逆養老保険とは福利厚生を目的とした養老保険の契約設定時に、満期保険受取人を通常法人とするのに対し経営者個人に設定し、死亡保険受取人を通常経営者とするのに対し法人を受取人に設定した保険である。
逆養老保険 驚くべき節税効果
養老保険と逆養老保険の会計処理の違いを以下説明する。
逆養老保険、養老保険共に支払額の1/2は福利厚生費として損金算入が可能だ。逆養老保険と養老保険の違いは残り1/2の取り扱いに現れる。
通常の養老保険は残り1/2が給与手当から支払われたものとみなされ課税対象となる。
逆養老保険は企業の支払金を経営者の定額役員報酬から支払ったものとみなした場合、損金算入が可能となる。つまり逆養老保険は支払額を全額損金として算入できるのだ。
契約期間の満期終了時、満期保険金の受取人が役員(経営者)となっているため、役員(経営者)が役員報酬として課税を受ける2分の1部分については保険の支払金として経費算入し、減額することも可能だ。
会社から役員報酬を増額して資金を自らに還流する場合に比べ、税負担を抑えられる優れた節税方法である。
加入に向く経営者 向かない経営者
逆養老保険の加入に向く経営者
- ①経営が順調で決算前に企業の内部留保が豊富な経営者
- ②役員報酬が1500万円を超え、高い税率がかかる企業の経営者
- ③役員(経営者)に退職金設定を行っていない企業の経営者
逆養老保険の加入に向かない経営者
- ①キャッシュ・フローが厳しく途中解約する可能性が高い企業の経営者
- ②役員報酬が1500万円を超えない企業の経営者
- ③著しい業績の悪化が見込まれ、役員報酬を減額する可能性が高い企業の経営者
数年前までは逓増定期保険、がん保険などの企業向け保険で全額損金算入が可能だったが、両保険ともに法律改正に伴い損金算入は1/2までと制限されることになった。しかし法律改定前に両保険へ加入企業した企業には全額損金算入が認められている。
逆養老保険も現在は明確な法規定がないため、いずれ損金算入が1/2となる可能性がある。経営する企業と逆養老保険の親和性があるならば、節税対策に加入を検討することは懸命な経営判断と言える。