もしあなたの会社が「これだ!」と思う優れた工業デザイン(意匠)の製品を生み出したとします。ただし、これと似た意匠により意匠権が既に申請されている場合、先に申請した意匠が優先されます。こうなると、意図的でないとしても、デザインを変えざるを得なかったり、無理に販売すれば、損害賠償のリスクを背負うことになってしまいます。そこで本稿は無料で類似の意匠権を未然に検索できる「Graphic Image Park」をご紹介します。
工業デザインを守る権利「意匠権」の重要性
意匠権とは、製品の美しさやユーザーの使いやすさを追求し、その結果として製品の商品性を高めることを目的としてアウトプットされた、「工業デザイン(以下、意匠)」を守る権利のことです。
アイフォンのデザインを「美しい」と感じる人が多いのは、アップルが製品の美しさやユーザーの使いやすさを追求し、その意匠を創り出したからです。
そして、アップルは、この意匠を意匠権によって守っています。
私達も自社製品について、良い意匠を見出した場合、これを守りながら販売するために、意匠権を申請する場面があるはずですが、意匠権は「先願主義」、つまり、先にデザインの意匠権申請者を優先する権利です。
似通った意匠で、先に意匠権を他社に申請されていた場合、私達はその意匠を使うことができません。
強引にその意匠を使おうとした場合はもちろん、無意識に似通った意匠を使っていたことがわかった場合でも、意匠権侵害で訴えられる可能性があり、損害賠償や販売差し止めを食らうこともあります。
そこで本稿は、自社の意匠をいわゆる「パクリ」と訴えられないため、最低限のチェックができるウェブサービスをご紹介します。
新たな意匠が他社の意匠権を侵害していないか簡単にチェックできる「Graphic Image Park」
今回ご紹介したいのは、INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)が運営する、インターネット上で意匠を画像検索できる「Graphic Image Park」というサービスです。
参考リンク:「Graphic Image Park」
この検索サイトでは、例えば、自社の工業製品の画像をドラッグ&ドロップすると、その形状や色彩の要素と近い意匠を意匠公報のなかから検索することができます。ただし、現在のところ、すべての意匠が対象となるのではなく機器の操作画像等の「画像」を含む意匠が検索の対象です。
たとえば、自動車の画像を機器の操作画像の一部に含む意匠と仮定したイラストを、「Graphic Image Park」で検索してみたとしましょう。
下の「結果を表示」ボタンをクリックしてみます。
さぁ、どうでしょうか…
大体、26,000件くらいの類似意匠が検索されましたが、どうでしょうか?
ざっと見た感じは大丈夫そうですね。
「Graphic Image Park」は誰でも無料で利用可能
ちなみに、これまでは、意匠出願を行う前に似た意匠がないかどうかを調査する場合、分類コード等で絞り込み、一つひとつ意匠を目視しながら行わねばなりませんでした。
今なら、「Graphic Image Park」を使って、自社製品の画像をドラッグ&ドロップするだけで近い意匠を検索することができるので、意匠の調査を効率的に行うことができます。
試しに、何でもよいので画像をドラッグ&ドロップしてみてください。
近い意匠が検索されるので、面白いです。
ちなみに、この検索サイトは、誰でも無料で利用することができます。検索方法や仕様について詳しくは、ガイドラインをご覧ください。
思わぬところで意匠が似ていたというのはよくある話です。余計なトラブルが起きないために、最低限のチェックを心がけたいところです。