ミスタードーナツを運営するダスキンは、昨年の11月に「クレームブリュレドーナツ」という1種類のドーナツについて意匠登録を行いました。意匠登録とはどのような制度なのか?意匠登録を行うメリットは?という論点に触れながら、ミスタードーナツがなぜ1種類のドーナツについて、わざわざ意匠登録したのか考えます。
ミスドがたった1種類のドーナツを意匠登録
こんにちは。弁理士の渡部です。
いきなりですが、以下の写真は何だと思いますか?
そうです。皆さん誰もがドーナツと答えることでしょう。
ただし、このドーナツはただのドーナツではなく、ミスタードーナツを運営するダスキンが昨年の11月に意匠登録した、「クレームブリュレドーナツ」の写真です。
なぜ、ミスタードーナツは1種類のドーナツについて、あえて意匠登録を行ったのか?意匠登録を行うメリットと共にご紹介したいと思います。
意匠登録とは?意匠登録を行う3つのメリット
意匠登録とは、製品のデザインを保護するために欠かせないもので、「デザインの特許」のようなものです。
製品のデザインを、意匠登録により保護することができ、以下ご紹介する3つのメリットを持つ制度です。
メリット1)他社の模倣を阻止できる
意匠権を取得することで、他社が同じデザイン又は似たようなデザインで製品を生産・販売することを阻止することができます。
登録されると20年間の保護を受けることができ、他社からデザインを真似される心配はありません。
メリット2)登録時に高い技術を求められない
意匠は製品のデザインですから、特許のように高い技術を求められることなく登録できるというメリットがあります。
また、外観から判断できるため、侵害されているかどうかの判別がつきやすいのもメリットのひとつだといえるでしょう。
メリット3)特許が取れない場合の代替措置となる
特許の取得が難しいケースでも、デザインに特徴のある発明であれば、意匠出願に変更し、意匠登録できる可能性があります。
何も複雑なデザインが必要とされるわけではありません。
単純なデザインであっても、これまでにないデザインであったり、単なる組み合わせでなければ登録される可能性は十分にあります。
意匠出願の際には、原則として対象製品の6面図を提出することになりますが、写真やコンピューターグラフィックスを提出することも可能です。
ミスタードーナツがドーナツのデザインを意匠登録したワケ
さて、ミスタードーナツがわざわざ1種類のドーナツについて、そのデザインを意匠登録したのにはどのような理由があるのでしょうか?
おそらく1つの背景としては、コンビニエンスストアとのドーナツ戦争において、コンビニエンスストアに対する模倣の防衛策を目的としていることでしょう。
一昨年には、某大手コンビニエンスストアのドーナツが、ミスタードーナツのそれと非常に似通っているという報道がありました。
断定こそできませんが、おそらく業界の先駆者をベンチマークにし、「真似よう」とは思わなくとも、自然とミスタードーナツのそれに似たデザインのドーナツを作ったであろうことは容易に推測できます。
このような事態に対して、これまでミスタードーナツは何ら防衛策を取っておりませんでしたが、今回の意匠登録は防衛策の第一弾と言えるでしょう。
個々の商品について、類似したり同一の商品をライバルが販売する場合、先に意匠登録をしておけば、自社オリジナルの商品と混同を生じたりする時に、不正競争防止法でライバルの販売を阻止できる可能性があるからです。
また、製法の登録ならまだしも、ドーナツの形状一つで特許を取ることは難しいですから、現実的かつ早期に手を打てるところから対策を始めたと考えられます。
同じように、中小企業で優れた商品を持っている場合、大手がすぐに真似することを十分想定に入れ、まずは意匠登録を行うことが懸命です。