多忙なビジネスマンや経営者には、じっくりと資産運用を行う時間がありません。更に資産運用時には利益よりも損失に敏感に反応する人間独特の心理効果が生まれ、不合理な判断が生じやすくなります。そこでお勧めしたいのが、システムトレードを導入した資産運用です。システムトレードを行う3つのメリットをご紹介します。
資産運用するなら機械的に売買する「システムトレード」がオススメ
ここ数年、賃上げという言葉をよく聞くようになりましたが、一方で社会保険料等の負担が増え、2年後には消費税の増税が迫るなど、私達の負担は大きくなっていきます。
また、国際的にボーダレス化する金融市場の中において、10年前と比較すれば大幅な円安が進んでおり、これがこのまま続けば、日本で稼ぐことはイコール、実質的な可処分所得の減少が起きることを意味しています。
そこで収入アップの方法として、株式やFX等による資産運用の重要性が、ますます強くなっていくことでしょう。
ただ、株式やFX等の投資は、機関投資家やアナリストといったプロと同じ土俵で行うものですので、高度な分析や日中マーケットを見るなど多くの時間が必要になります。
また、昔だと「相場師」と呼ばれる方々がいらっしゃいまして、相場観が良い人とか情報の当たり屋的な人につけば、割と儲かるようなところがありましたが、先述のプロたちも機械売買を主とするようになっているため、勘や情報のみで資産運用することが難しくなっています。
そもそも、多忙なビジネスマンや経営者は多くの時間を資産運用に割けない方が多いはずです。
そのような方に、私達がお勧めしているのが、時間や高度な分析力を必要としない「システムトレード」による資産運用です。
システムトレードとは、事前に決めておいた売買ルールに従って、機械的に取引を行う投資手法のことをいいます。
例えば、テクニカル指標等を使い25日移動平均線を◯%上回ったら買い、買値から◯%下回ったら売りというようなルールを設定し、これを継続的に続けます。
近年、売買判断や注文をコンピュータに自動執行させる自動のシステムトレードが普及していますが、注文が手動でもルールを決めた売買はシステムトレードと呼ばれます。
ここからは、システムトレードを行う3つのメリットをご紹介します。
システムトレードによる資産運用〜3つのメリット
1)行動ファイナンスを踏まえ感情に左右されない資産運用が可能
自身の判断で売買する裁量トレードと比較した場合、システムトレードの一番のメリットとして、感情に左右されず機械的に売買できることが挙げられます。
持ち株が急落した時、リバウンドする理由を探してなかなか損切りできないことはありませんか?
システムトレードでは事前に運用ルールを決めているため、希望的観測など感情に左右されることがありません。
心理的、感情的な要素が市場や価格形成に影響を及ぼしているとの考え方が前提になっている行動ファイナンスという学問があります。この行動ファイナンスの中心的な概念にプロスペクト理論があります。
プロスペクト理論とは、人は利益を得る場面では「利益を確実に手に入れることを優先」し、損失を被る場面では「損失を最大限に回避することを優先」する傾向があるという心理行動を表した理論です。
単純に言うと、「人間は利益よりも損失に敏感に反応する傾向を持っている」ということです。
例えば、あなたならAとBどちらの選択を選びますか。
- A:1000万円が確実に手に入る
- B:投げたコインが表なら2000万円、裏なら0円が手に入る
ほとんどの方はAを選択すると思います。
50%の確率で0円になる可能性があるよりは、確実に1000万円をもらう方が良いと考えるのです。
しかし、あなたが2000万円の借金を抱えている状況だとしたらどうでしょう。
多くの方がBを選択するのではないでしょうか。
Aなら確実に借金を1000万円まで減らすことができます。
Bは50%の確率で借金を全額返済できる可能性はありますが、同じ確率で借金がまったく減らない可能性もあります。言い換えると、一か八かのギャンブル性の強い賭けと言えます。
なぜBを選ぶのでしょうか。
それは人間は利益を前にすれば確実に利益を取ろうとし、損失を前にすればその全てを回避しようとする性質があるからです。
そのため、質問のように全く同じ金額を目の前にしても、利益と損失では損失の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動をとるのです。
株式投資等で負けている人は損失を一気に取り返そうとし、その結果、さらに損失が膨らんでしまう傾向があるのです。
システムトレードは、このような事態を防いでくれるヘッジ手段として非常に有効です。
2)損大利小を実現しやすい
また、資産運用時は、利益、損失ともに金額が大きくなればなるほど、どんどんその感覚が鈍ってくる性質もあります。
利益も損失も金額が小さいうちは小さな変化にも敏感になりますが、金額が大きくなるにつれて鈍感になります。
例えば、利益が出ている時、少し利益が増えただけでも満足度が急に高まりますが、その後は利益が増えても満足度がそれほど高まらなくなります。
さらに利益が拡大しても満足度がほとんど拡大しないため、そこで利益確定を急いでしまいます。
損失が出ている時は少し損が大きくなるだけで不満が大きくなりますが、その後は損失が増えても不満はそれほど高まらなくなります。
こうなると、損失が拡大しても不満が拡大しないため、いつまでも損切りができずに塩漬けとなってしまいます。
このように人は利益に対してはリスク回避的となり確実に利益を取る為に少し利益が出ただけで利益確定していまいますが、損失に対しては取り戻そうとするためリスク志向になります。
上記のようにプロスペクト理論が指すものは「損大利小」です。相場に勝つためには、損失を小さくし、利益を大きくする「損小利大」が絶対条件になります。
裁量でトレードすると感情に支配され「損大利小」になりがちなところを、感情に影響を受けないシステムトレードにより「損小利大」にすることができます。
3)多忙なビジネスマンにもお勧め「時間的なメリット」
3つ目のメリットとしては、時間的なメリットがあります。
特にビジネスマンの方は一日中相場を見続けることはなかなか難しいと思います。
自動注文のシストレはもちろんのこと、手動注文でも事前に決めた売買ルールに従って、週末やお昼休みに注文を入れておけば良いので、相場を長時間見る必要がありません。
また、システムトレードは過去の統計に基づいて買い売りを判断するので、アナリストや機関投資家のような高度な分析力や銘柄の発掘能力も必要ありません。
テールリスクに弱いというデメリットも理解しよう
一方でシステムトレードには、デメリットもあります。
システムトレードの売買ルールは多数のサンプルを抽出し、統計的に組まれていることが多く、○○ショックや○○バブルなどこれまで前例のない相場、いわゆるテールリスクには弱い傾向があります。
また、システムトレードの売買ルールが広く浸透し、大勢の投資家が同じ行動をしてしまうと効果が低下してしまうことがあります。
そのほか、システムトレードでは欲求や感情に左右されないことが最大のメリットとしましたが、どんな相場でも継続してトレードを続けることができるかがポイントとなります。
特に手動注文の場合、システムが買いシグナルを出しても、チャートや値動きを見て、上がりそう、下がりそうなど直感が働いてしまい、システムとは違う行動をとってしまうことがあります。
また、負けが続いてしまうとこのシステムのロジックは有効に機能していないとネガティブに考えるようになり、自身の判断でシステムトレードを一旦休止してしまうことがあります。
システムトレードは長期的に継続してこそ力を発揮するものであり、どんな状況でも継続することに意味があります。
とはいえ、システムトレードは相場に対して多くの時間をかけることができないビジネスマンにとって、大変メリットのある投資手法だと思います。
自身で有効に機能するシステムを作り上げるには労力がかかりますが、インターネットでシステムトレードの運用を公開しているところもありますので、そういったものを有効活用していくことをお勧めします。