事業専従者とは、生計を一にしている配偶者、その他の親族が、納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に給与を支払う際の対象者を言います。事業専従者に渡す給料は、一定の条件を満たした場合に、控除特例を利用して経費にすることが可能です。気をつけるべき点も踏まえて解説いたします。
事業専従者と事業専従者控除の特例って何?
事業専従者とは、生計を一にしている配偶者、その他の親族が、納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に給与を支払う際の対象者を言います。
これらの人に支払われる給与は、原則として所得税法では必要経費にはなりません。
ところが、次のような場合には、特別の取扱いが認められています。
青色申告者の場合
一定の要件の下に、実際に支払った給与の額を必要経費とする青色事業専従者給与の特例
白色申告者の場合
事業に専ら従事する家族従業員に応じた金額を、必要経費とみなす事業専従者控除の特例
もっと簡単にかみ砕いていえば、家族に払う給与などは経費にはなりません。
しかし、一定の要件を満たしていれば、特例として経費とすることも認めているよということです。
細かい要件は、下記のURLを参照してみてください。
事業専従者控除の特例はどんな時に使えるの?
では、どのような場合に、家族に払う給与を、事業専従者控除の特例を利用して、経費とすることができるのでしょうか?
事業専従者控除の特例を利用できるか否かは、「事業に従事」という部分の「事業」というところがポイントとなります。
専従者というのは、「専ら従う者」と書きます。
ですので、基本的には事業に専念する人という事ですから、他で週4でパートに出ているような妻を専従者というのは、かなり難しいところと言えます。
また、最近ではサラリーマンがアパートやマンションを購入して、副収入を得ているパターンも出ていますよね。
不動産所得では、基本的に5棟10室という概念があります。
この規模以上で不動産所得を得ていなければ、通常は事業的規模とはみなされません。
なお、5棟10室の考え方をする場合、駐車場は「5区画1室」として考えると実務的には言われています。
例を挙げれば、
- アパート8室
- 駐車場10区画
という場合であれば、駐車場の10区画は2室として数えられますから、8室+2室で合計10室となり、事業的規模を満たします。
事業専従者というぐらいですから、事業的規模を満たしていないのに給与を出していても、税務調査では否認される可能性が高いことと思われます。
時々そのような規模を満たしていないのに、専従者給与を出してしまっていらっしゃる誤りが見受けられますので、どうかご注意下さい。
年末調整や確定申告の配偶者・扶養控除とよく比較して利用しよう
こちらもよくある誤りなのですが、青色事業専従者給与や事業専従者控除を適用した場合、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の適用はありません。
事業所得や不動産所得で経費にしつつ、所得控除でマイナスするのは、2重控除になるという考え方のためです。
そもそも、配偶者控除や扶養控除は働いていない人が前提なワケですから、所得を得られるぐらいであれば控除も不要だという事です。
ここで、気をつけていただきたいのが、あまりに低い事業専従者給与を設定するぐらいならば、給与を出さず、配偶者控除や扶養控除を受けた方が支払う税金は低くなるという事です。
- 配偶者控除:38万円(70歳以上は48万円)
- 扶養控除:38万円(19歳~22歳は63万円、70歳以上は48万円。70歳以上で直系ならば58万円)
上記の金額以下の給与を支払うぐらいならば、所得控除をした方が、事業主の所得税は少なくなることとなります。
仮に給与を支払ったとしても、経費扱いとしない方が家族全体では税金は少なくなります。
どうしても家族に給与を払いたいなら法人化も
所得税の勉強をした時には、身内に実際のところ給与を払っていたとしても、税法上は経費にならないのが不思議でしたが、そのようになっています。
まぁ、税金を取られるぐらいならば、家族に給与をいっぱい払って所得分散した方が、結果として得になりますしね。
そういう意味では、事業専従者給与の特例は、所得税の累進課税制度(所得が多くなるほど税率が高くなる方式)をうまく利用した節税方法だと思います。
いっそのこと、フランスのような世帯課税(家族ごとに税金を計算する方式)にしてしまえば、このような問題もある程度は無くなるのではないかと個人的には思います。
とはいえ、現状の日本において、どうしても税率などを考えて給与を出したいならば、事業を法人化してしまうのも一つの手だとは思います。
もちろん、その場合には、社会保険の取り扱いが厳しくなっていますので、そこを忘れないようにご注意下さい。
法人は社会保険への加入が義務付けれられていますので。
特に、今は年金事務所からのお尋ねが届いていると各所で聞いております。くれぐれもご注意を。