働き方の多様化が進んで個人事業主という形で働くことも浸透しつつある。個人事業主は書類を届け出れば簡単になることができ、所得控除を受けることで税制面のメリットも大きい。本稿では個人事業主になる方法やメリットをご紹介する。最初から会社(法人)を作るとが正解とは限らないので、よく熟慮して自分の道を選択しよう。
働き方の多様化は進む 個人事業主も選択肢
契約社員、派遣社員、フリーランス、最近ではさまざまな雇用形態で働く人が増えた。もちろん雇い主のお財布事情なども大いに影響するが、働く側から見ても”働き方の種類が増えた”と言える。
ではより組織にとらわれない働き方は何だろうか、と考えたとき、一番に思い浮かぶのが個人事業主だ。自営業という言葉の方が耳に入ってきやすいかもしれない。
株式会社等の法人化をせずに、自ら事業を行っている個人を指すが、どんな場合に個人事業主になるとメリットがあるのかをまとめる。
知識として知っておきたい人以外にも、今漠然と「独立したい」と考えている人にもぜひ読んでもらいたい。
個人事業主は法人と何がどう違うの?
まずは基礎知識として、個人事業主がどんなものかを知るために、法人と比較して簡単にまとめてみよう。
◆個人事業主
すぐ始められる。経理、税務の手続きが簡単。所得によって所得税は5%~40%が適用される。
◆法人
社会的信用が高い。設立時に費用がかかり、強制適用される社会保険料にもコストがかかるなど、いろいろ大変。所得に対してかかる法人税は、15%か25.5%程度である。
次に、個人事業主になるための手続きについてだ。
基本的には、管轄の税務署へ行き「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するのみで完了する。記入項目もさほど事前準備の必要はなく、唯一悩むとすれば「屋号」だ。
店名や会社名にあたるもので、営業であまり使わない場合は適当な名称で構わない。もし将来的に法人化する野心を持っているなら、そのまま引き継げるので、夢と希望を込めて名付けてみよう。
そして、開業届提出時に、多くの人は「所得税の青色申告承認申請書」も一緒に提出する。確定申告時に、白色と青色の2種類あり、青色の方が、所得控除が受けられて税制面でメリットがあるからだ。
個人事業主は、思い立ったら税務署へ行き、その日から屋号を持てる便利な独立方法なのである。
個人事業主と法人ではどちらがお得か?
個人事業主か法人か、どちらが税金面や運営面でお得になるかは、売り上げや営業形態にもよるので一概には言えない。
とはいえ、”売上(≠所得)が1000万円以下の場合は、個人事業主がお得”と言える。
売上にかかる消費税が、個人事業主で1000万円以下の場合は「小規模事業者の納税義務の免除」という特例があり、納める必要がなくなるからだ。
売上が安定して1000万円以下をキープできるなら個人事業主、超えるなら法人ということになる。
ただし、売上から必要経費を差し引きし、残ったお金が個人事業主の利益となるが、本来はこの部分が一番重要なことは言うまでもない。
おまけ・個人事業主は主であり社長ではない
最後におまけの豆知識として、個人事業主は「主」であって「社長」ではない。
個人タクシーの運転手をする場合を例にすると、自分が車1台で稼ぐので、売上もとことん高額にはならないことが前提なため、個人事業主となるのがオトクである。その場合、運転手は、社長ではなく、その事業を行う”主”となる。
もし複数台で昼夜交代制、運転手も何人か雇って、と考えると、それはグループの代表、つまりは社長として機能する必要があるので法人化が必要になる。
ただし、個人事業主であろうが、社長であろうが、税金をいくら払っていようが、タクシーなら利用客を早く安全に目的地まで運ぶ、という責任に何ら変わりはないことは忘れないようにしたい。