ユニクロの4時間社員制度の導入など、短時間正社員という雇用形態が、数年前から注目されるようになりました。短時間正社員制度の導入によって、企業にはどのようなメリットが生じるのでしょうか?また、短時間正社員制度を導入する際に気をつけるべきこととは何でしょうか?解説いたします。
短時間正社員という雇用形態に注目が集まる
短時間正社員という雇用形態が、数年前から使われるようになりました。
ユニクロの4時間社員などがその代表例ですが、今後、短時間正社員を取り入れていく企業は、ますます増えて行くかと思います。
短時間正社員とは、業務に対する責任や賞与や、退職金と労働条件も正社員と同等に扱われるのですが、正社員よりも所定労働時間が短くなります。
どんな場合に、短時間正社員の雇用形態が取られるかと言うと、正社員であった労働者が出産、子育て等でフルタイムで労働できなくなった場合が現在は多いようです。
導入により、企業にはどんなメリットが生じるのでしょうか?
短期正社員制度の導入はパートタイマー同士の軋轢を埋める
これまでは、正社員が一旦労働を辞めて復帰する場合、パートタイマー等の非正規社員として労働する場合が殆どでした。
ところが非正規社員となると、業務に対する責任や賞与等で正社員と待遇に差がでるため、優秀な労働者のモチベーションが下がったり、労働力が流失してしまうリスクがありました。
更に業務だけ考えれば、従来の業務に従事させることは可能ですし、パートタイマー等の非正規社員が1名くらいならば、賞与等も支払ってもいいかもしれません。
しかし、非正規社員が多数いる場合には、他の非正規社員との兼ね合いもありますので、その者だけに賞与等の待遇を与えることは、不平等となり、軋轢を産んでしまいます。
こういった背景から、ある程度の業務ノウハウを持った人材の雇用を維持するために、短時間正社員のニーズは今後も高まると考えられます。
有能なパートタイマーの正規雇用にも短時間正社員制度が役立つ
また、パートタイマー等の非正規社員が、短時間正社員になる場合も考えられます。
現在、どの企業でも、パートタイマー等を積極的に活用していますが、優秀なパートタイマーを活用することは、企業発展に大きく寄与します。
パートタイマー等の有期労働者を、正社員に転換するケースも、今後は更に増えていくと言えます。
しかし、優秀なパートタイマー中には、様々な理由で、正社員と同じ労働時間を働けないパートタイマーもいます。
従来であれば、そのような場合は、パートタイマーであり続けるしかなかったのですが、短時間正社員制度を設ければ、優秀なパートタイマーにとってモチベーションも上がり、生産性の向上にも繋がります。
ただし短時間正社員と正社員間でのリスクとリターン差を埋める必要がある
ただし、短時間正社員については、1つの課題について考えなければなりません。
厚生労働省のHPでは、「短時間正社員」の定義を、フルタイム正社員と比較して、1週間の所定労働時間が短い正規型の社員であって、次のいずれにも該当する労働者としています。
- 1.期間の定めのない労働契約(無期労働契約) を締結している
- 2.時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等
こうなると、基本給及び賞与等の算定方法が正社員と同じになり、仕事に対する責任も同じ程度と考えられます。
正社員の場合、業務を遂行するために、所定労働時間を超えての労働や休日労働が必要となる場合があります。
時間外労働者や休日労働をして、初めて自らの業務に対する責任を果たすことができる場合も、現時点では決して珍しくありません。
短時間正社員の場合、正社員と同じだけの時間の労働を遂行することが困難であるため、正社員と仕事に対する責任を同じだけ果たせるか不透明です。
仕事に対する責任に差が出るのであれば、待遇面で差を付ければ良いと言えますが、それではパートタイマーの概念に近くなってしまいます。
となると、「短時間正社員」という「正社員」という意味合いに、正社員が違和感を覚えざるを得ない場合もあることでしょう。
これらを解決するためには、使用者及び労働者の間で、十分な話し合いを重ねた上で、制度を導入する必要があるかと思います。
短時間正社員は上手に活用できれば、効率的な人員配置に繋がる可能性もありますので、自社の実状に合わせて導入を考えていきましょう。