経営者(経営者層)の方々にとっては、あまりゴールデンウィークも関係がないのかもしれませんが、電話も鳴らず、打ち合わせもほとんど入らない期間ではあるはずです。この機会にしっかりと読書をする時間を作ってみるのはいかがでしょうか?MBAが薦める3冊のビジネス書をご紹介します。
GWは経営者にとってベストな読書ウィーク
世間ではゴールデンウィークですね。
もっともサラリーマンでない経営者(経営者層)の方々にとっては、あまりゴールデンウィークも関係がないのかもしれませんが、電話も鳴らず、打ち合わせもほとんど入らない期間ではあるはずです。
私がよくお話をする経営者の方も「GWとお盆が一番仕事がはかどる!」と豪快におっしゃる方が多いので、皆さん元気だなと刺激を受けてます。
もちろんGWに仕事をするのもいいのですが、普段はなかなか集中してインプットする時間もないでしょうから、この機会にしっかりと読書をする時間を作って、経営者としてのレベルアップを図ってみてはいかがでしょうか。
そんな主旨でこのGWに、経営者の方にぜひ読んで欲しい3冊をご紹介します。
いずれもかなりのボリュームがある本ですので、しっかりと時間をとることができる、この時期のインプットに最適です。
MBAがGWにオススメしたい3冊のビジネス書
(1)ストーリーとしての競争戦略/楠木建
ストーリーとしての競争戦略とは、「勝負を決定的に左右するのは戦略の流れと動きである」という思考様式です。〜本文より〜
私自身が「MBAに通う前に読んでおきたかった!」と心の底から感じた1冊です。
競争戦略というとどうしても「コストリーダーシップ」や「ランチェスター戦略」などの他社と比較して自社はどうするのか、どうやってナンバーワンになるのかという部分を考えてしまいがちです。
しかし、他社も当然に同じように考えており、その結果としておこるのはコモディティ化です。そこからは本来の競争の源泉である、差別化のポイントはなかなか見えてきません。
結局は自社のコアバリューはなんなのか、ということを掘り下げていくことでしか、差別化は実現しないと私は思っているのですが、そのコアバリューを「ストーリー」という切り口で説明したのが本書です。
メーカーが強かった時代が続いた日本では、どうしても差別化のポイントを技術力や特許に求めてしまいがちですが、それをどういう文脈(ストーリー)の中で顧客に提供していくのか、という観点が欠如してしまうことも少なくありません。
携帯電話やデジカメの「●百万画素」や自動車の「燃費●キロ」などというスペックを全面に出した広告がその典型です。
それが顧客にどういうメリットを提供するのか、もっと言えば顧客はそれによってどういう体験が出来るのか?ということが語られていなければ、何の意味もありません。
新しい技術や特許が使われていることが理由で商品が選ばれることなど皆無なのです。
そこで登場するのが「ストーリー」です。
提供する商品・サービスは企業として顧客に提供するストーリーの中における一つの要素なのです。
もちろん、そのストーリーを成立させるためにその商品・サービスは不可欠な要素なのですが、決して商品・サービスを売るためにストーリーが作られるわけではありません。
ここは非常に重要なポイントです。
しっかりとしたストーリーがある商品・サービスは圧倒的な競争優位性を持ちます。1つ1つのパーツを見ると簡単に真似することができそうであっても、ストーリー全体として強みを発揮しているため、実質的に高い模倣困難性を有しているからです。
商品のスペックや価格というパーツではなく、企業として提供するストーリー全体を考えることでこそ、本当の競争戦略となるのです。ストーリーは自社で作り上げるしかありませんが、そのきっかけとしてぜひ本書を読んでみてください。
(2)チャンジ・ザ・ルール/エリヤフ・ゴールドラット
真のメリットを享受するには、同時にルールを変えなければいけません。長年にわたって行動パターン、カルチャーなどとして形成されてきたルールです。〜本文より〜
『ゴール』で有名なゴールドラット博士の1冊です。
博士の提唱するTOC(制約条件理論)は製造現場だけでなく、広くビジネス全体まで応用することができます。
本書はソフトウェア開発会社を舞台として、複雑になる一方のシステム要件とそれが引き起こす現場の混乱、マーケットからの成長に対するプレッシャーなどを非常にリアルに書き出しています。
小説になっていますので、非常に読みやすく、TOCをとてもよく理解できます。
TOCの大きなポイントは、ボトルネックを見つけ出すことです。
最終的にそのボトルネックを解消しなければいけないのですが、これを力技で解消するのではなく、そのボトルネックが生じている前提条件を疑うことが非常に重要です。
私たちは知識や経験から「常識」や「ルール」、「慣習」というフィルターを通して物事を見ています。しかし、あるときにこれをまったく違う観点から破壊するプレイヤーが登場します。
昨今「ゲームチェンジャー」と呼ばれる企業のことです。
新しい技術やシステムは、ただ導入するだけでは絶対にうまくいきません。
スマホやインターネットが現在ほど発展していなかった時代に作った業務フローや慣習に、なんの意味があるのでしょうか。
新しいものを導入するだけでは、そのメリットを十分に享受することはできません。新しいシステムを導入するのであれば、古いシステムに合わせて作られた仕組みも変えていかなければなりません。
それが本書の「チェンジ・ザ・ルール」というタイトルです。
常に全体を俯瞰し、常に最適な仕組みを探し求めることが、勝ち続ける企業の強さの秘訣だということを、この本は教えてくれます。
(3)決定力!/チップ・ハース&ダン・ハース
未来は点ではなく”幅”だ。たったひとつのシナリオを予測するのは不可能。未来を”幅”でとらえ、最悪の結果から最高の結果まで、結果を範囲で考えるべきだ。〜本文より〜
経営者の最も重要な仕事は、「決定」を下すことです。
この商品を開発するのかどうか、この投資をするのかどうか、常に意思決定にさらされ、またその責任を取らなければいけないのが経営者なのです。
もちろん、未来のことは分かりませんので、完璧な意識決定というものはありません。
すべての情報が揃っていることなどあり得ませんので、不完全な状態でどう判断するかが、経営者の腕の見せ所。それが正解だったか、不正解だったかは結果だけが教えてくれます。
振り返ってみれば「なぜあの時、あんな判断を下してしまったのか」という後悔をすることも少なくないでしょう。なぜなら、百発百中と言うことなどあり得ないのが意思決定です。
しかし、いずれにしろ経営者は「決定」しなければなりません。右か左か、AかBか、あなたが決めないことには会社は前に進めません。それが正解か不正解かは進まなければ分からないのです。事前に答えが分かっている問題などないのです。
とはいえ、すべてが直感というのは、あまりにもお粗末です。やってみなければ分からないとはいえ、戦車に竹やりで戦いを挑むのはただの愚か者であり、地図も持たずに闇雲に突っ走っても、目的地にはたどり着けません。
人は間違いをおかしてしまう生き物ですが、そこにはある程度のパターンがあり、科学的に説明ができるものも実は多いのです。
意思決定におけるパターンを解き明かし、その回避方法を解説したのが本書です。
「視野の狭窄」や「確証バイアス」などの行動経済学でよく登場する概念が随所にちりばめられており、非常に実践的な内容となっています。
もちろん一朝一夕で身につくものではありませんが、人間として誰もが陥りやすいエラーパターンを把握することで、あなたの意思決定の精度は格段に向上するはずです。
こちらが3冊目にお勧めする本です。
本は人をより豊かに強く高めるのに最適な道具
いかがだったでしょうか?
読みにくそう…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、3冊とも内容が面白いので、意外とサクサク読み進められます。
書物の新しいページを1ページ、1ページ読むごとに、私はより豊かに、より強く、より高くなっていく。(チェーホフ)
という言葉にもあるように、取り入れた知識は必ず生かされます。
もし上記に挙げた本を読んでくださったら、非常に嬉しいです。皆さんにとって、良いゴールデンウィークとなりますように。