自由民主党税制調査会及び公明党税制調査会にて12月10日、平成28年度税制改正大綱案(消費税・軽減税率については16日)が了承されました。現時点(平成28年1月時点)では自民党と公明党の両議員が、衆議院議員の議席数の3分の2以上を占めていますので、税制改正大綱の内容もほぼ通過する可能性が高いものとなっています。本稿では特に法人に関連する改正案を5つピックアップしました。
税制改正大綱の中身は殆ど国会を通過する予想
自由民主党税制調査会及び公明党税制調査会にて12月10日、平成28年度税制改正大綱案(消費税・軽減税率については16日)が了承されました。
税制改正大綱とは、翌年度の税制改正法案を決定するのに先立って、与党や政府が発表する税制改正の原案のことで、政府が国会に提出する税制改正法案のたたき台です。
現時点(平成28年1月時点)では自民党と公明党の両議員が、衆議院議員の議席数の3分の2以上を占めていますので、税制改正大綱の内容もほぼ通過する可能性が高いものとなっています。
今回はその中でも、法人に関する主な改正案を5つまとめてみました。
法人の税金に影響を与える5つの税制改正大綱
1) 法人税の税率の引き下げ
現行(平成27年度)の法人税率23.9%が、以下のように引き下げられます。
- 平成28年度及び29年度:23.4%
- 平成30年度:23.2%
今年は参議院選挙も控えているため、「選挙の前に増税なし」「大企業の票集め」とも揶揄される税制改正ですが、黒字企業にとっては恩恵が与えられる内容です。
2)の外形標準課税と密接な関連があります。
2)外形標準課税の税率の見直し
外形標準課税における所得割の税率が引き下げられ、資本割と付加価値割の税率が引き上げられます。
資本金1億円超の企業は支払う税額の負担が増えますが、一方で資本金1億円超の約30%にあたる6500社が赤字であることから、「赤字企業には退場してもらう」政策とも呼ばれています。
3) 実効税率の引き下げ
上記1及び2により、法人の実効税率は下記になります。
ちなみに法人税の実効税率とは、国税である法人税だけでなく、地方税を含めて、法人企業の利益に課税される税の実質的な負担率を示したものです。
平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | |
---|---|---|---|---|
中小法人 | 32.11% | 29.97% | 29.97% | 29.74% |
大法人 | 34.33% | 33.80% | 33.80% | 33.59% |
4)繰越欠損金の利用制限の見直し
法人実効税率の引き下げの財源として、大法人の繰越欠損金の利用制限が見直しされます。
平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | |
---|---|---|---|---|
現行 | 65% | 65% | 50% | 50% |
改正案 | 65% | 60% | 55% | 50% |
5)地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
地方公共団体が行う一定の地方創生事業に対して、寄付を行った場合に、法人事業税・法人住民税の税額控除が認められます。
現行の原案では、地方自治体への寄付額の30%を、法人住民税などの税金から控除できるようになる予定となっています。
つまり現行の寄付金制度(寄付金の約30%の節税効果)と合わせて、寄付金の約60%が税金から控除できることとなります。
これは中小企業も含めて、節税対策の一環として幅広く活用されることでしょう。
黒字企業に恩恵も赤字企業にはメリット少ない
以上、法人に関連する今年の税制改正を、かいつまんで説明しました。
基本的に安倍政権としては、「税金は安くするので、利益が出た企業は人件費や設備投資を増やして欲しい」というスタンスのようです。
逆に言えば、赤字企業にとっては、あまりメリットが少ない税制改正が今年は行われることでしょう。
今後の国会審議含めて、上記5つの改正がどのように決着するのか、注意深く監視していきたいですね。
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