トマ・ピケティの名著「21世紀の資本」は相続と複利が生み出した富の不均衡について、問題提示する内容となっています。
では、持たざる者はどのようにして、彼らと同じような富の恩恵にあずかることができるでしょうか?キミアキ先生の解説です。
トマ・ピケティの名著「21世紀の資本」
皆さん、こんにちは。あおば会計コンサルティングの田中です。
世界的に大作と言われている、トマ・ピケティさんの「21世紀の資本」という本をご存知でしょうか?
「21世紀の資本」の内容を簡潔に一言で表すと?
この本は分厚すぎて読むのが大変なので、日本だけでも何種類もの要約図解本が出ているくらいです。
この本がぶ厚すぎる理由は、データをきちんと調べた結果だからと言われていますが、ではピケティーさんが言っている事を、私なりに一言で解釈すると、「相続と複利の問題」にまとまる気がします。
ピケティさんの「資本家の収益率が経済成長率を上回っている」という言葉は、経済成長率に従って、その分配を受けている労働者は、資本家の富には絶対に負けてしまうという話に意訳することができるでしょう。
要するに、「この世界では働いたら負け」「お金持ちになりたかったら資本家になるしかない」ということですね。
日本の代表的な2つの相続産業とは
まずは「相続」について考えてみましょう。
日本の代表的な相続産業というのは2つあります。
第1次産業
ひとつは第1次産業です。
農業・漁業・林業の第1次産業は相続産業と言われています。親から引き継いだ農地であったり、漁業権であったり、第一産業を家業とする家計は「権利」を使って商売をしています。
不動産賃貸業
もう一つは不動産賃貸業の多くが相続によって成り立っているものです。
大きく違うのは、第1次産業の方は何かしら国からの補助金や助成金が結構出ています。
ところが、不動産賃貸業に関しては、特に税制面からすると、生かさず殺さずの業界だとひしひしと感じます。
ほんの少し前までは競争などあまり考えずに、なんとかなった時代もありましたが、今は普通の事業と同じように競争が激しいですから、地形的センスがかなり必要になっているという事実もあります。
不動産賃貸業の成功事例はほとんどが「相続」不動産
東京のように賃貸用の不動産が非常に多い街で、不動産を貸すことができる立場の人というのはほとんどが「相続」です。
税理士法人の方に聞いても、確定申告の時期に9割近くの人は何らかの土地建物を相続して、不動産賃貸業をされているそうですから、自分でゼロから始めた人は1割くらいしかいないということです。
つまり、都会では最初から相続によって資産を持っている人間が、圧倒的に資本家となりやすいと言えるでしょう。
「複利」の法則とは?
相続と同じぐらい重要なことは、複利の法則です。
自分で事業を始めたり、会社を興したりすると、余ったキャッシュを再投資することができます。
投資することによって、1がそのまま1.05とか1.1倍に、さらに2乗3乗という感じで、複利の法則が働くわけです。
対して、労働者は投資することもないので、複利の法則も働きません。
ですから、経済成長が低い時でも高い時でも、結局は資本家の方が有利だ、という結果をピケティさんは過去のデータから洗い出しています。
庶民はキャッシュフローをどう生み出すかを考える
家族の収入を分散させるとキャッシュフローが生まれる
結局、ピケティさんの考える理論を見ると、我々庶民というのは、大資本家と戦っても絶対勝てないということです。
ところが、我々もまだ商売人として、自分たちのキャッシュフローをもつことができます。
そのキャッシュフローを、自分の中でどうやって持っていくかが大事になります。
私共の家族では、妻が税理士法人を運営し、私はコンサルタント・YouTuberとして活動しています。
そうすることで、収入源を分散していますが、どこの家庭も本気でやれば、だいたい年間2000万円ぐらいのキャッシュフローは生み出すことができます。
家族で稼ぐ時は「社会のルール」を疎かにしない
ただし、先行投資という名目で、無駄遣いをしていないか、それは本当に投資しないといけないものなのか、それとも浪費なのかということは、しっかり見ていかないとできません。
会社が潰れていく過程でよくあるのが、しっかり会社のルールを守っているかどうかです。
特に、同族企業はルールを無視して、過去のやり方の延長で、適当なお金の使い方をして、ぐちゃぐちゃになることが多いです。
資産家は外部に監査してもらっている
ピケティさんたちがいう資産家という人たちは、なぜ資産価値を残すことができたかというと、彼らが外部から自分達の状況を監査してもらうということをきちんとやってきたからです。
日本ではファイナンシャルプランナーという人たちを使うケースが少ないので、会計事務所がチェックすることが多いのですが、他人の目できちんと監査をしていくだけで全然違います。
お金持ちの人達は、増やすことよりも減らさないということだけを考えています。
ですから、十分に複利の法則が働いて、なんとなく資産が増えているという形もあります。
他人の目で監査することが資産を増やす秘訣
キャッシュフローをたくさん持つには、安全のためにも収入源を分散しましょう。
そして、財産形成をファイナンシャルプランナーに頼まないのであれば、会計事務所に頼んだり、または自分の子どもたちに頼んだりするだけでも随分違うと思っています。
自分だけで判断せず、他人の目できちんと監査をしていくことが資産を増やす秘訣だと認識してください。
21世紀の資本 | トマ・ピケティ, 山形浩生, 守岡桜, 森本正史