事業承継で後を引き継ぐ社員がいる⇒自己資産だけで株を買いきれない!
人手不足が深刻化する中、中小企業では事業承継、つまり後を引き継ぐ人をどうするかという問題が大きくなっています。
自分の子供が引き継ぎたがらないということも多くなっており、親族に限らず優秀な社員に任せるというケースも増えています。
会社を引き継がせる場合、その社員を役員にして株を譲るというのが一般的ですが、社歴が長く、業績も悪くなかった会社であれば、株式の価値が相当高くなっている可能性があります。
そうすると、社員が自己資産だけで株を購入しきれないと、一度に株を譲渡するのがなかなか難しくなります。
事業承継で株を取得する社員の資金調達〜4つの方法
- 金融機関から借入をする
- 会社が貸し付ける
- 株価を下げる
- 贈与する
1)金融機関から借入をする
株の譲受資金を金融機関から借り入れて賄います。株の譲渡は個人間取引ですので、その社員が個人で借り入れることになります。
当然利息の負担が発生しますし、もし既に住宅ローンなどの借入があれば融資を受けられないか、受けられても少額になる可能性があります。
2)会社が貸し付ける
株の譲受資金を会社が貸し付けます。返済は現金で行ってもよいのですが、その分給与を増額して返済に充てるという方法も取ることができます。
但し、給与を上げると社会保険料、所得税、住民税が上がるため、本人の手取りが減ってしまう恐れがあります。そうならないような調整も考慮してあげる必要があるでしょう。
また、会社に十分な資金があることが前提です。もし貸し付けたせいで資金繰りが逼迫するようでは本末転倒となってしまいます。
3)株価を下げる
例えばこのタイミングで役員も辞任してしまい、退職金等で大きな費用を計上して株価を下げ、譲渡しやすくするということも考えられます。
ただし、この方法は登記名目上だけでなく実質的にも辞める必要があるほか、退職金の支払に多額の会社資金が流出する、借入金がある場合には金融機関が辞任を認めない可能性がある、といった問題があります。
また、株式分割をして1株当たりの価値を下げ、少しずつ譲渡するという方法もあります。
この場合、最初に多額の資金を用意する必要は無くなりますが、全てを譲り渡すまでかなり長い時間がかかる、その間に株価が上昇してしまう、といった問題があります。
4)贈与する
株式を譲渡ではなく贈与で渡すとすれば、資金は贈与税分だけ準備すればよいことになります。例えば株式の価値が2,000万円とすれば、譲渡であれば2,000万円必要ですが、贈与であれば税金分695万円でOKとなります。
また贈与税には「非上場株株式等についての贈与税の納税猶予」の制度がありますが、要件が厳しいため念入りな準備が必要となります。
贈与の最大の欠点は、譲渡でもらえるはずだったお金が一切もらえないということです。そのため一部を譲渡、一部を贈与といった使い分けをすることも考えられます。
選択肢に迷ったり不明点がある場合は専門家と相談を
いかがでしょうか?
金額の大きい場合は、上記にあげた手法を複数活用して資金調達を行い、株を受け継ぐケースもあります。
いずれにせよ、会社の財務内容や、事業承継で引き継ぐ人間の資力など、個別の状況で判断は大きく変わります。