来たる平成28年12月8日に、平成29年度の税制改正大綱が発表されました。本稿が着目する「配偶者控除及び配偶者特別控除」の改正は、平成30年からの適用となります。それぞれの改正からは、高額所得者に対しての課税強化が見え透けます。2年前の相続税法改正も含め、高額所得者にとってはキツい改正と言えるでしょう。
配偶者控除及び配偶者特別控除の税制が改正
来たる平成28年12月8日に、平成29年度の税制改正大綱が発表されました。
税制改正大綱は税制改正する前段階のたたき台になります。
今回はその中から、配偶者控除及び配偶者特別控除について記載いたします。
早くとも平成30年分から適用となりそうです。
少々先にはなりますが、世の中における大きな流れを把握するために重要な改正ですので、チェックしていきましょう。
配偶者控除の改正〜高年収の人にとっては不利
現状の配偶者控除は、扶養に入れる配偶者側の所得は関係ありましたが、控除を受ける側の所得に制限はありませんでした。
今回の税制改正大綱の内容を拝見しますと、
「合計所得金額が1,000万円を超える居住者については、配偶者控除を適用できないこととする」
と記載されております。
つまり、配偶者特別控除と足並みをそろえたことになります。
現状の所得税法の給与所得の計算でいきますと、年収が1,220万円を超える人は配偶者控除の適用がなくなるということになります。(平成29年分の給与所得控除の計算が1,000万円超の場合は220万円しか控除できません)
所得が1,000万円を超えなくても、下記の表のように段階的に控除の額が低くなるようです。
控除する人の合計所得金額
控除する人の合計所得金額 | 控除額(カッコ内70歳以上老人控除対象配偶者) |
900万円以下 | 38万円(48万円) |
900万円超950万円以下 | 26万円(32万円) |
950万円超1,000万円以下 | 13万円(16万円) |
1,000万円超 | 0円(0円) |
配偶者特別控除は適用範囲が大きく広がった
配偶者控除が減額となった一方で、配偶者特別控除は上がったようです。
現行の制度ですと、配偶者の所得金額が38万円超~76万円未満となっていますが、今回の改正大綱では、配偶者の所得金額が38万円超~123万円以下に引き上げられました。
これにより、対象者は所得金額ベースで47万円ほど引き上げられ、範囲が広がったことになります。
以下、表にまとめました。
配偶者の合計所得金額 | 控除額 | 配偶者の合計所得金額 | 控除額 |
38万円超85万円以下 | 38万円 | 105万円超110万円以下 | 16万円 |
85万円超90万円以下 | 36万円 | 110万円超115万円以下 | 11万円 |
90万円超95万円以下 | 31万円 | 115万円超120万円以下 | 6万円 |
95万円超100万円以下 | 26万円 | 120万円超123万円以下 | 3万円 |
100万円超105万円以下 | 21万円 | 123万円超 | 0円 |
政府の大きな方針は「高額所得者への課税」か
今回の税制改正大綱の考え方に「就業調整をしなくてすむように」という文言がありますが、それはあくまで配偶者特別控除による所得税の話だけでしょう。
更に言いますと、こちらでは社会保険の扶養の考えが置いてきぼりとなっておりまして、現状の社会保険の扶養は年収130万円以下です。
従って、配偶者特別控除が適用できて所得税が減額できたとしても、配偶者が社会保険の扶養から外れてしまいます。
結果として、世帯での税金と社会保険料を併せた金額は高くなってしまう現象が起こり、今後も配偶者の勤め先での就業調整は行われる可能性すらあります。
もう一つの注目点として、政府の大きな方針として「高額所得者から取る」姿勢が強まっています。
個人の相続税も上がりましたし、今後もそのような流れは止まらないのかなと。
この流れが止まらない以上、高額所得者は、シンガポールなど海外移住も考える人が多くなるのではないでしょうか?
そういった事も、今後の日本を考えるうえで考慮していただきたいと思う次第です。