経営者にとって所得税や法人税の支払いよりもキツイのが、消費税の支払いです。消費税はどんな時に支払わねばならないものか、消費税を支払う必要がある4要件の詳細を知ることは肝要です。今後の増税を見据えると、消費税に関する正しい知識を知っていることが、会社の存続に関わると言って過言ではありません。
所得税や法人税よりやっかいな消費税の支払い
個人事業主でも法人でも、「売上の金額が1,000万円を超えると消費税を納めなければならない」ということは皆さんもご存知の通り。
事業を始めたばかりの方にとっては、1,000万円と聞くと物凄く大きな金額に感じるかもしれませんが、それなりにキチンと仕事をしていれば、1,000万円の売上って意外に簡単にいってしまいます。
しかも消費税の負担は、払う時になると思っている以上に大きく感じるモノです。
所得税や法人税はほとんど納めなくても、消費税だけは年間で100万円以上支払っている会社も結構あります。
そんな負担が大きい消費税ですので、どのような時に消費税がかかるのか?どのような時に消費税がかからないか?を整理しておきましょう!
どのような取引を行うと消費税はかかるのか?
消費税の対象となる取引(収入)は、「消費税法」という法律で規定されています。
- 1)日本国内において行う取引であること
- 2)事業者(会社や個人事業主など)が行う取引であること
- 3)ビジネス(事業)として行うモノであること
- 4)モノ(資産)を売ったり貸したりした時やサービスを提供した時の収入であること
これら4要件を満たす取引は、消費税の対象となるコトが法律で決められています。
逆を言えば、これらの4つの要件を満たさない取引は、消費税の対象とはならないことになるのです。
4要件が揃わない「消費税の不課税取引」とは
先述の通り、
- 1)日本国内において行う取引であること
- 2)事業者(会社や個人事業主など)が行う取引であること
- 3)ビジネス(事業)として行うモノであること
- 4)モノ(資産)を売ったり貸したりした時やサービスを提供した時の収入であること
これら4要件を満たさない取引は消費税の対象となりません。
こういった対象外の取引を、専門用語で「消費税の不課税取引」と呼びます。
1)〜4)に当てはまらない取引の例を、以下ご紹介しましょう。
1)日本国内において行う取引であること
例えば、アメリカで商品を売買する際、当たり前ですが、その取引は日本国内で行われていません。
ですから、日本国外で行なわれる取引には日本の消費税がかかりません。
これは誰でも想像がつくでしょう!
2)事業者(会社や個人事業主など)が行う取引であること
例えば、サラリーマンがマンガ本をネットオークションで売ったとしましょう。
サラリーマンは会社でも個人事業者でもないので、2)の事業者には当てはまりません。
ですから、こういった取引については消費税の対象にならないんですね。
3)ビジネス(事業)として行うモノであること
では、個人事業者の方が、マンガ本をネットオークションで売った場合はどうでしょう?
もし、この個人事業者のヒトが「中古品の転売で利益を稼ぐ」ようなビジネスをしている場合には、3)の要件を満たすことになります。
例えば、Amazonマーケットプレイスで「せどりビジネス」などをしている方たちが該当します。
こういった方たちの場合は、マンガ本を売るという行為自体は全く同じなのですが、消費税の対象になってしまうのです。
逆に、普段はコンサルタントなどで収入を得ている人たちが、趣味で購入したマンガ本を売ったとしても、それは3)の要件には該当しないので消費税の対象にはなりません。
ただし、経費で購入した専門書を売却した場合には「本業の副収入」とみなされて、消費税の対象になってしまうので気をつけましょう!
ちなみに、会社(法人)の場合には、基本的に無条件で、2)と3)の要件を満たすことになります。
4)モノ(資産)を売ったり貸したりした時やサービスを提供した時の収入であること
基本的に多くの取引は、
- モノやサービスを提供する
- その対価として収入を得る
という流れで出来ていると思います。
ただし、取引の中には、こういった流れを踏まないケースもあります。
例えば、 モノやサービスを提供しないのにお金(収入)が入ってくることがあります。
一番わかりやすい例が「寄付を受ける」ような場合。
何もサービスを提供していないのにお金をくれる方ってありがたいですよね。
最近はクラウドファウンディングなど、その趣旨に賛同して無条件でお金を出してくれる人もいます。
こういったように対価をもとめられない収入については消費税の対象となりません。ただ、クラウドファウンディングであっても、その見返りとしてサービスを提供する場合は消費税の対象になりますよ!
また、その逆にこちらがサービスを提供してもお金をもらわないケースもあります。
その代表例が「ボランティア活動」をした場合。
サービスは提供していますが、相手からその見返りとしては収入は入ってきません。
こういったような場合でも消費税の対象となるコトはないのです。そりゃ、お金も入ってきていないのに「消費税だけ払え」って言われても困ってしまいますよね。
4要件が揃っても消費税の対象とならない場合
上記で紹介したように、基本的に消費税には、「収入(対価)を得る=消費税の対象」という大原則が存在しています。
ただ、この要件が揃った場合でも「消費税を納めなくてもよい」取引が存在します。代表例を3つご紹介しましょう。
1) 海外への輸出は免税
基本的に消費税は「日本国内」の消費されるものに対して課される税金ですので、海外で消費されるものは対象外になります。
ですから、日本国内から海外へ輸出されるような取引については、消費税を免除してあげる「免税」という扱いになるんですね。
外国人旅行者が日本でお土産を買う時も、「お土産は母国に持って帰ってから使う」ことが前提になるので、消費税が免税になります。
これが免税店でお買い物をしても、消費税がかからない理由です。
2) 政策的な要素の強い非課税取引
日本国内の取引でも、「政治的な意味合いで消費税をかけないでおこう」という線引をされた取引があります。
いろいろ種類があるのですが、例えば学校での教育や病院での治療、出産や介護、亡くなったときの埋葬にかかるお金、などについては消費税がかかりません。
この点は、更に詳しく今度の記事でご紹介します。
3) 給料は例外的に消費税の対象外
サラリーマンの方が会社で働いて得た収入は、消費税の対象とはなりません。
給料について消費税がかからない理由は幾つかありますが、いまいち説得力のある理由って実は存在しません(´・ω・`)
同じように働いていても、派遣社員に対して、派遣会社に対して支払うお金には消費税がかかりますしね。
このように例外的に消費税がかからない取引というものもあります。
増税も見越して正しい知識を備えて申告しよう
最初にもお伝えしましたが、順調にビジネスが成長していくと、消費税の負担は非常に大きくなってきます。
今後、増税が見込まれた時には、更にその影響度は大きくなっていくでしょう。
正しく申告しないと間違って多く納付してしまったり、逆に少なく申告して後から税務署にペナルティを課せられる可能性もあります。
中には、消費税の滞納で税務署から担保を設定されて、家や土地を取られてしまうなんて事例もあるんですよ。
また、消費税については個々の取引で判断する必要があります。
取引の内容についての判断は税理士や税務署にキチンと確認することをオススメします。