突然の災害が起きた時、事業継続計画(BCP)において、細かい業務フローが整理されているならば、より早い復旧と事業継続に向けた活動が開始可能になります。業務フローを表すフローチャートの作り方と、業務フローの中における重要項目の抽出方法を解説したいと思います。業務フローチャートを作ることで、通常業務にも思わぬ効率化が図れる場合もあります。
業務フロー把握はBCP策定における基本ベースである
以前の記事では、どんな業種業態の企業であっても利用できる、事業継続計画(BCP)の策定フローをご紹介いたしました。
中でも重要な項目としてお伝えしたのが、「業務毎にフローチャートを書くこと」でした。
突然の災害が起きた時を想定して、細かい業務フローを整理して、正確に把握する必要があります。
しかし、事業が大きくなるにつれて、大まかな流れは理解していても、これら業務フローが見えなくなっている場合があります。
そこで本稿では、業務フローを細かく策定する手順をご紹介しようと思います。
業務フローの詳細なチャートを作ってみよう
業務内容を細かく把握するためには、中核となる業務や商品毎に、契約・発注から納品(集金)までの流れを、フローチャートにして細かく書き出す必要があります。
- 縦軸:介在するすべての会社や部署(個別対応の場合は個人名)、使用する機械や装置など。
- 横軸:時系列に区切り、必要に応じて日付毎や時間毎に替えて使う
というフローの策定が理想となります。
業務によっては並行して進めるものも多いため、このような形式が見やすく把握しやすくなります。
記載する表記方法に決まりはありませんが、部署(人)ごとに行なう処理(データ・帳票類の入出力、承認)や、機械で行う製造や加工など、第三者でも分かりやすい名称で表記し、次の工程を矢印で記しましょう。
以下は、その具体例です。
記入する項目のポイントとして、下記のような工夫があります。
- ・誰が見ても分かるような名称と流れを記載する
- ・使う機材(PC、機械、場所)ごとにセル枠に色付け
- ・承認が必要な事柄は赤文字にする
- ・個人に頼らざるを得ない業務(職人等)は青文字にする
- ・項目(○人)、加工(○h)のように投入する人数や必要となる時間の目安を入れておく(後々に重要ポイントが分かりやすくなります。)
業務フロー策定が通常業務の効率化に繋る例も
また、ある工場では、原発事故の影響で計画停電を余儀なくされていた事を踏まえて、高圧電力が必須な業務を反転文字にして、計画停電に備えた対策や生産体制の見直しを行っている企業もあります。
業務フローは、経営者と各現場の部門担当者とが一緒に作成することが望ましく、併せてコンサルタントなど第三者的な視点から見てもらうのが良いでしょう。
このような工程を改めて把握することで、災害リスクだけでなく、ムダやムラは無いか?ムリがかかっている部分はどこか?などの現状を知ることが可能になります。
更には業務フローの策定が、通常業務における効率性の見直しにつながっている事例もあり、これまでひとりに依存していた体制を改善して代替者を育成するようになったケースもあります。
このように事業継続計画(BCP)の副産物として、業務改善につながることもあります。
なお、全てのコンサルタント会社が「業務フローの把握」を行っているわけではありませんので、その点はご注意ください。
重要業務や柱となる商品の抽出は客観的データを元に決定しよう
最後になりますが、中核業務や柱となる商品がいくつも存在する場合は、そのなかで優先して復旧させなければならない業務や商品に、優先順位をつける必要があります。
このような場合には目安として、
- どの商品が最も売上げが良いのか?
- 損害が最も大きくなる商品はどれなのか?
- 納期や期間が厳しく定められているものはどれか?
- 復旧させやすい業務や商品はどれなのか?
などの観点から、優先順位を明確にして、客観的にどの業務や商品が重要項目かを検討してください。
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著者:
災害リスク評価研究所 代表
松島 康生先生
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