事業継続計画(BCP)と防災計画は、どちらも自然災害(地震、風水害)や大規模事故災害、パンデミック(重大な感染症)などを含む被害を前提とした対策です。しかし事業継続計画には、防災計画に含まれていない、ビジネス面のリスクを阻止するための対策が含まれています。両者の違いを歴史的な背景を踏まえてご紹介いたします。
ご存じですか?事業継続計画(BCP)と防災計画の違い
よく質問されることの一つに、「事業継続計画(BCP)って防災計画のことですか?」というものがあります。
しかし、両者は似て非なるものです。以下、定義をご紹介致します。
事業継続計画(BCP)
あらゆるアクシデント(自然災害、感染症、事故、システムや通信の障害、ライフラインの停止、内部不祥事、テロ行為など)に備えて、重要かつ優先度の高い業務から、速やかに復旧・再開できるように策定しておく計画のことを指す。
主に事業の早期復旧に重点をおいた内容となってる。
企業における防災計画
従業員(人命)や建物・機材・情報(資産)を守ることを目的としたもの。
どちらも自然災害(地震、風水害)や大規模事故災害などを含む被害を前提とした対策です。
しかし、事業継続計画(BCP)には、業務を停止させる要因(材料や部品の供給停止、システムや通信の障害、内部不祥事、テロ行為など)が含まれています。
事業継続計画と防災計画で異なる歴史と自社に見合った計画策定
日本の企業における防災計画は、阪神・淡路大震災(1995年)を契機に増えてきました。
また、事業継続計画(BCP)は、海外を発祥としてアメリカ同時多発テロ(2001年)から日本でも徐々に浸透しはじめてきた背景があることから、防災計画と重複する部分が多くあります。
併せて中小企業庁も、その必要性があることに鑑み、2005年あたりから事業継続計画(BCP)を推進しはじめました。
本来であれば、両方の計画を個別に策定するのが理想なのですが、先のような背景があることから、重複している項目や内容も多く存在します。
個人的な見解ですが、まだ、事業継続計画(BCP)も防災計画も策定していない会社は、必ずしも別々に新規策定する必要はないと考えています。
これら両方を兼ね備えた「事業危機管理計画(仮称)」を策定してみても良いのではないでしょうか。
また、事業規模や事業フロー(サプライチェーン)を考慮した身の丈に合った、時間も費用も無駄にしないで済む計画でも良いのではないか、と考えています。
定期的なPDCAを行うなかで、計画内容が大きくなったら別々に切り離しても良いかと思います。
事業継続計画は全社周知と実践的な体制作りが大事
なお、取引先から「事業継続計画(BCP)」の策定を要求されている企業については、取引先に必須項目を聞いておく必要があります。
一番大事なことは、アクシデントに備えて早期に計画を策定して、その内容を会社全体に周知させ、実践的な体制を作ること。
更には、定期的な検証(訓練)と見直しが大切です。
計画を作る前に難しく考えすぎず、たたき台となる事業継続計画を作成して、その後ブラッシュアップしていくことをお勧めします。
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著者:
災害リスク評価研究所 代表
松島 康生先生
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