事業継続計画(BCP)を策定している主な業種は、製造業のように部品や材料を調達し、加工・成形して出荷する業務フローを前提にしているケースが多いです。しかし、サービス業であろうと卸売業であろうと、BCPが必要なことに変わりはありません。そこで今回は、どの業種業態でも使えるBCPの策定項目をお伝えします。
BCPはどの業種業態でも必要とされる危機管理マニュアル
事業継続計画(BCP)の一般的な事例としては、製造業のように部品や材料を調達し、加工・成形して出荷する業務フローを前提にしていることが多くなります。
ただし、建設業、設備業、運輸業、情報・通信業、卸・小売業、サービス業、士・師業など、業種や業務内容によっては、優先度や重要度が異なってきます。
本稿では地震災害を前提に、どの業種でも対応できる内容として、BCPの策定項目を簡単にご説明したいと思います。
どんな会社でも対応できるBCP策定項目はこれ
【1】業務ごとのフローチャートを書き出す
まず、契約の受注後、お客様へ納品して代金回収するまでの業務フローを、人やモノ・機械が介在するプロセスとして細かく流れ図にして描きます。
このフローにはお客様や取引先などの利害関係者も入れます。
これにより、ムダやムラはないか、ムリが掛かっていないかなどの現状把握にもつながります。
【2】優先される重要業務の検討と抽出
【1】で作成されたフローチャートを基に、どの業務が重要なのか、復旧させやすい業務はどれなのか等を検討していきます。
【3】被害想定と現状把握
自社の実態に応じて、
- ・大規模災害時の会社の直接的な被害想定
- ・大規模災害時の2次的影響の抽出
をあぶり出します。
【4】影響度のシナリオ
こちらも自社の実態に応じて、
- ・復旧するまでのタイムリミットと復旧目標時間の設定
- ・経営資源の抽出(人・物・資金・情報など)に与える影響
をあぶり出します。
【5】業務復旧させるための対策案の抽出
やるべき対策、または対応可能な対策については、早期復旧対策案として抽出します。
また、すぐにできないもの、または将来必要な対策は、予防対策へ抽出します。
【6】事業継続計画(BCP)の策定
- ・実施責任者(部署、グループ、チーム、個人)
- ・誰が、何を、いつまでに、どこで行うべきか
といった具体的なBCPの査定を行います。
【7】周知と普及・啓発
- ・計画策定前(災害による危険性や会社への影響)などのリスクを知ってもらう
- ・計画査定後(どのような対策を行うのか、意見の集約など)を周知・研修を行う
における、社員や取引先に対する周知と普及・啓発を行います。
【8】検証・テスト運用
- ・有効性の検証
- ・運用手順の確認
をテスト運用により行います。
【9】見直しと改善
小規模なBCP運用なども踏まえて、PDCAを繰り返して、内容を改善していきます。
なお、会社の事業規模や策定するコンサルタント業者によっては下記のフローがあてはまらない場合がありますが、基本的な考え方はほぼ同じです。
自治体の取り組み(参考)
都道府県および市町村は、住民の生命や財産を災害から守ることを目的とした「地域防災計画」の策定が義務付けられています。
この内容は地震編、風水害編、資料編があります。
また、自治体によっては、大規模事故災害編や原子力災害対策編などの災害種別ごとに分けられ、それぞれ総則、予防計画、応急対策計画、復旧復興計画に章立てされています。
さらに有事やテロに備えて、国民保護計画が策定されています。
近年では、事業継続計画(BCP)と同様の「業務継続計画」を策定している自治体も増えつつあります。
毎回、同じことを申し上げるようですが、大規模地震はいつ起きてもおかしくない状況下にあります。
最初から完璧な事業継続計画(BCP)を作ろうとせず、大切な従業員の命や会社を守るためにも、早期に計画を策定して、その内容を会社全体に周知させ、定期的な検証(訓練)によって実践的な体制を作ることが大切です。
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著者:
災害リスク評価研究所 代表
松島 康生先生
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