アベノミクスのおかげで景気が良くなったと言われて久しく経ちますが、総務省の発表によると、2012年から、2015年で非正規労働者数はおよそ200万人増加しています。中小企業の経営者で非正規雇用を行われている方は多いと思いますが、東京都が出す「非正規労働者処遇改善促進助成金」は取得要件が比較的容易なのでお勧めです。プロに解説してもらいました。
景気が良くなっても非正規雇用は増え続けてる
アベノミクスのおかげで景気が良くなったと言われて久しく経ち、一部の業界では正規雇用の「人材難」という言葉がそこかしこで叫ばれています。
しかしその裏で、非正規労働者の数も増えていることを皆さんはご存知でしょうか?
総務省の発表によると、2012年4-6月期の非正規労働者数が1,775万人だったのに対して、2015年4-6月期の非正規労働者数は1,953万人へと大幅に増加しているのです。※
正社員よりもリスクの少ない非正規雇用を重視する(現実的にそうせざるを得ない場合を含め)企業が多いことを、如実に示す数字と言えるでしょう。
読者であり経営者である皆様の中にも、非正規雇用を雇用の一手段として継続している方が多いことと思います。
東京都が非正規労働者雇う企業へ助成金を支給
そんな方に朗報があります。平成27年5月20日より東京都から、すごい助成金が登場したのです!
今回、東京都が発表した助成金は、「東京都非正規労働者処遇改善促進助成金」という随分長い名前の助成金です。
この助成金は、非正規労働者の正規雇用化や処遇の改善が求められている情勢に鑑み、非正規労働者の処遇改善に取り組む姿勢を見せる中小企業等の事業主へ助成金を支給することを趣旨として定められました。
助成金の金額は1社あたり40万円(定額)と金額からすると少ないと思われますが、要件が非常にゆるいのがポイントです。
以下、助成金の取得にあたっての要件や手続きを提示したいと思います。
<要件:重要なものを抜粋>
- ・東京都に会社があること
- ・非正規労働者が1名以上(半年以上勤務)
- ・納税をしていること
<助成金取得対象者>
東京都に謄本住所がある場合、最少人数での助成金受給が可能となります。社長1人、パート(半年以上勤務実績あり)1人がいれば、これで既に要件クリアです!
<実務手続き:最低限ライン>
- ・就業規則の作成・変更(処遇制度の整備、教育・研修制度の整備・福利厚生制度の整備)
- ・雇用環境整備に係るニーズ調査(アンケート作成)
<リスク>
東京都の職員が会社訪問します。目的は下記事項の調査になります。通常の会社であればまったく問題ありません。
- 会社が実在しているのか?
- 対象従業員が実在しているのか?
- 制度を適正に運用しているのか?
<プロから見たポイント>
対象事業者は常時雇用する労働者が300人以下の都内に本社を置く中小企業等と定義されております。よってある程度、規模がある会社様でも申請ができますが、私は少人数の会社様の受給をおすすめいたします。従業員1人から10名程度の会社では就業規則も整備されていない場合が多く見受けられます。この状態では非常にリスクを抱えています。この機会に当該助成金を活用し、適正な就業規則を作成して、それを運用することで今後の企業の危機管理を充実させつつ、雇用の定着を図ることをお勧めします。
この機会にオススメしたい就業規則作成
少し本稿の助成金から話がそれてしまいますが、「就業規則」の作成がなぜ重要なのか、ここで場所を割いてご説明したいと思います。
就業規則は一般的には軽視されていることが多いと思いますが、実は非常に重要な会社のルールブックになります。
当然、各種法律の範囲内で定められたルールに従う必要がありますが、その中でも会社が独自にルールを定めることもできます。
現代においては労働問題がいつ自社に起きてもおかしくない時代です。
そんな時代だからこそ会社を守る(リスク回避・節税等)ことができる就業規則は重要になります。助成金取得を機に作成されることをオススメいたします。
また就業規則は作成内容により、実は色々なメリットを組み込むことができます。
インターネットからのダウンロード、書籍の付録など無料若しくは低額にて入手することもできますが、そのような就業規則では当該助成金を受給することも困難ですし、ましてや会社を守ることは期待できません。
よって、就業規則の作成は専門家に依頼することを是非おすすめします。
助成金の申請時は数をこなしたプロに依頼せよ
最後になりますが、「東京都非正規労働者処遇改善促進助成金」は比較的申請要件がゆるい助成金ですが、それでも一般の方が自分で全てを用意して申請するのは骨が折れる作業です。
そこでお勧めしたいのがプロ(社会保険労務士)に頼むことです。
ただし社会保険労務士さんにも様々なタイプがおり、就業規則作成や助成金申請を依頼する場合、インターネットで検索すれば沢山のHPが表示されます。
さらに金額もまちまちですので最安値を狙う気持ちも十分理解できます。
しかし、社会保険労務士(専門家)であっても、能力に大きな差があることを認識して下さい。
得意分野は各事務所により異なりますので依頼する場合に注意が必要になります。
依頼される際には弊社の用に年間1000件以上の手続きを実施している事務所に依頼するのが一番望ましいです。多少報酬が高くても助成金であれば確実に入金され、就業規則についても適正なものが作成されます。
コスト面を重視すると、逆に助成金の受給ができず受給できるはずの金額を損する事にもなりかねません。
事前に相手へ十分にヒアリングした上で依頼することをお勧めいたします。
参照元
※ 総務省「労働力調査」
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/pdf/2015_2.pdf