スチュワードシップ・コードの元となる2000年前の例え話

資産運用

 「スチュワードシップ・コード」とは、上場株式に投資する機関投資家のための行動規範、更にシンプルに言えば、会社に対して「モノ言う株主」の責任とは何か、を定めたものである。イギリス由来の制度は、更に遡ると聖書のある例え話に原理を見つけることが可能だ。一神教の国で出来た制度が、八百万の神を崇める日本でどのように息づくか今後が見ものだ。

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新企業監視制度スチュワードシップ・コード

 機関投資家の間で広がりをみせている「スチュワードシップ・コード」をご存じだろうか?

 「スチュワードシップ・コード」とは、上場株式に投資する機関投資家のための行動規範、更にシンプルに言えば、会社に対して「モノ言う株主」の責任とは何か、を定めたものである。

 利害関係のあるすべての者によって企業を統制し、監視する仕組みである「コーポレートガバナンス・コード」を、より効果的に実現するために、企業に加え機関投資家の責任を明らかにした指針は、アベノミクスの目玉である”3本の矢”のひとつである「日本再興戦略」の政策として、金融庁が中心となって2014年2月に策定された。※1

 およそ70の国で導入されている「コーポレートガバナンス・コード」と比較すれば、「スチュワードシップ・コード」は、イギリス、カナダ、イタリア、オランダ、南アフリカ、スイス、マレーシア、日本など、一部の国だけで導入されている政策だ。

 更に国や公的機関によって「スチュワードシップ・コード」を策定しているのは、イギリス、南アフリカ、そして、今回の日本でようやく3カ国目である。

 指針は「機関投資家には、投資先の企業価値の向上や中長期的な成長に関与し、リターンを拡大させる責任がある」と説明している。

 この制度が浸透すると、「株主を儲けさせていない社長」と機関投資家に判断された企業経営者は、株主総会で退任を要求されるシーンも増えるようになってくる。

 日本の金融市場では、「スチュワードシップ・コード」を導入するかどうかは完全に任意であるにもかかわらず、2015年2月末時点で、184の機関投資家が受け入れを表明した。

 その中には、名だたる大手金融機関系の投資会社はもちろんのこと、137兆円の公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」の名前もあがっている。

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スチュワードシップ・コードを支える原理

 元来「スチュワードシップ・コード」は、イギリスで生まれた行動規範である。スチュワード”Steward”とは、もともと中世時代のイギリスで領主に雇われ農園を管理する人を指す意味でもある。

 ここまでは各誌が伝えるところであるが、もっと深くこの行動規範の原理を掘り起こすと、そこにはキリスト教の教えがある。

 ギリシャ語聖書マタイ伝25章に記述された「タラントの教え」という、イエス・キリストが弟子に伝えた例え話だ。

 例え話のあらすじは

  • ある主人が3人の下僕にそれぞれお金を預けて旅に出た。
  • 3人のうち2人は預けられたお金を使い商売を始めた。
  • 1人は「これっぽっちで稼がせようとする主人はケチだ」と主張し、お金を地中に埋めた。
  • やがて時が経ち、主人が旅から戻ってきた。
  • 賞賛されたのは預けられたお金を元に更に稼いだ2人の下僕であり、彼らは更に稼いだお金託された。
  • お金を銀行にさえ預けず地中に隠した下僕は、託されたお金を主人から取り上げられ放逐された。

 というものである。

 この例え話が伝えるのは「人間は神に選ばれ、万物の支配を委ねられている」「神から預かった物を豊かにして、預けた者に返すことは正しい行いである」という、キリスト教の原則である。

 スチュワードシップ・コードが各国で制度化を叫ばれ始めた原因の1つは、2008年に発生したリーマン・ショックにより露見した金融機関の「コーポレートガバナンス・コード」の欠陥であり、さらに、金融機関に問題がありながら何ら行動を起こさなかった機関投資家にも問題がある、と考えられたことにある。

 キリスト教文化圏の国にとって、出資者から預かった資金を運用する機関投資家(例えだと下僕)が、預かった資金の運用先に対して何も発言しないことは悪になるのだ。

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一神教由来の制度が八百万の神の国で始まる

 ”正しい行為と責任”を全うするために、イギリスの「スチュワードシップ・コード」では、法的な権限をもつ金融庁が”管理人”になることはなく、金融報告審議会(FRC)と呼ばれる、権限とは関係のない組織が管理することになっている。

 一方で現在、日本においては“官”たる金融庁が主体となって「スチュワードシップ・コード」を推し進めている。

 元来日本は島国であり、本気でお上にモノを申さぬ風潮が国民の特性となっている。今までの国内機関投資家も、強いものに巻かれて波を立てぬ投資判断を下すきらいがあった。

 キリスト教、タラントの教えに基づく原理原則は、アベノミクスの”3本目の矢”になり得えて、 ほんとうに機関投資家が「神から預かった物を豊かにして、預けた者に返す」スチュワードの役目になれるのだろうか?

 一神教のキリスト教世界からやってきた制度に、八百万(やおよろず)の神々を崇拝する日本がどう対応するのか今後に注目が集まる。

※1 「責任ある機関投資家」の諸原則  日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会
http://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf

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