昨年4月に消費税が増税となり、はや1年が経過した。更に今年の春は”値上げの春”と揶揄されるほど、多くの商品が値上げされた。企業にとって来年の消費税10%への増税は、更なる便乗値上げを行うチャンスでもあるが、消費税に関する特措法で禁じられていることを今一度思い起こしたい。良識ある値上げを行うことで消費者の信頼を得よう。
便乗値上げは判定困難で取り締まる法も無い
昨年4月に消費税が増税となり、はや1年が経過した。更に今年の春は”値上げの春”と揶揄されるほど、多くの商品が値上げされた。
乳製品、冷凍食品、ケチャップから牛丼まで、卸・小売の値上げのニュースが報じられたことは記憶に新しい。消費税と共に物価の上昇は留まるところを知らない。
一般的に資本主義社会は自由競争を原則としているため、価格設定は企業に委ねられている。そのため消費者は値上げの要因が、消費税価格の上昇と原材料価格の上昇どちらによるものか判定が難しい。
便乗値上げを取り締まる法律もないため、購入後に販売が不当と感じた場合、最終的には民事裁判を販売者へ求める以外にはない。
企業にとって来年の消費税10%への増税は、更なる便乗値上げを行うチャンスでもあるが、あまりにも消費税の増税に便乗した商法を行うと、引っかかってしまう。
「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下:消費税に関する特措法)」があるからだ。
消費税に関する特別措置法の禁止事項を知る
消費税に関する特措法とは、消費税の価格転嫁を阻害する行為(買い叩き)へ抑止力を持ち、消費税の表示方法について公序良俗を保つことを販売側へ依頼する法律だ。
消費税の増税分を支払わない「買い叩き」については、家賃の消費税増税分の支払い拒否を行ったことで、吉野家、アイフル、SMBCコンシューマー・ファイナンス、西松屋等が既に勧告を受けて、是正措置の対応を行っている。
しかし多くの企業が気をつけなければならないのは、第二条第三項以降にある「消費税の表示方法」についての規則であり、以下のとおりとなる。
1)税込価格であると誤認される表示
税抜き価格の商品を税込み価格であるように誤認させる表示は禁じられている。昨年の春を例に例えると、1,000円だった商品を税抜き1,080円表示で販売し、明確に税抜きか税別か表示していない場合は、消費者を誤認する表示として勧告を受けることになる。この場合は便乗値上げと判定される。
2)消費税を自社が負担しているように錯覚させる表示
特措法の目的は、消費者が最終消費財の購入にあたり消費税をきちんと払うことにある。従って「消費税は当社が負担します!」という表示は、消費者が消費税を支払っていないように錯覚させるため、特措法で取り締まられてしまう。
3)消費税分を割引しているように錯覚させる表示
「当社カード利用によるポイント還元で消費税分をバック!」という表示は、消費者が消費税分を割引購入しているように感じてしまうため、原則的にNGである。
消費者は知恵を販売者は良識を求められる
内閣府の発表によると、消費税に関する特措法によって今年の3月までに、17,000件以上の通報があった。そのうち10分の1にあたる1,728件が指導の対象となった。
しかし報告が上がっている消費税に絡んだ違法行為は、氷山の一角にしか過ぎず見極めるのも難しい。
最終的には販売側の良識に基づいた適正な表示と、納得される値上げが望まれる。
グレシャムの法則では「悪貨が良貨を駆逐する」と定義がある。しかし、悪貨はいずれ公的な権威によって駆逐されるのも歴史上の事実だ。
武富士を始めとした消費者金融が不当な過払いを消費者に強いた結果、過払い金の返却と利息に制限を設けられたことは記憶に新しい。
世の中が祭りムードを帯びているからこそ、消費者に対して真摯に向き合った消費税上昇、物価上昇に対する対応をしていきたい。