相談役や顧問の存在明かす上場企業は20%以下
今年から東証が、社内での役割が不透明だと指摘される「相談役」や「顧問」について、上場企業に情報の開示を求める制度を開始しました。
その結果、「相談役」などがいるかどうかを明らかにした企業は、現時点で20%以下にとどまることがわかりました。
東証によると、報告があった827社のうち、「相談役」や「顧問」がいるかどうかを明らかにした企業は160社程度しかなかったそうです。
更に、報酬の具体的な金額を開示した企業はわずか5社しかありませんでした。
相談役や顧問の名称で、前の経営者がいつまでも会社に残り、「院政」をひいていることに対しては、かねてから多くの批判があります。
おそらくですが、相当数の企業が相談役や顧問がいらっしゃるということなのでしょう。
では、なぜこれほど相談役や顧問となる方が多いのでしょうか?
大企業が相談役や顧問の役職を設けるワケは?
院政を敷くために相談役や顧問がいる企業があるのも確かです。
しかし、多くの場合、相談役や顧問の期間は、現役役員を引退した翌年1年間に限定されることが多いことにも着目しなければなりません。
というのも、役員をやった方は最後の年の年収が巨額です。たとえば3,000万円の年収があったとしましょう。
所得税の支払いはその年のうちに蹴りが付くのですが、住民税は翌年に支払うことになります。
高額所得者の住民税率はおよそ10%ですので、翌年収入がなくなったが、住民税を300万円支払う必要があります。
それでは困るだろうから、1年間は顧問として、たとえば300万円とか400万円とかを支払うことになっているケースが多いのが実情です。
既得権益なのは明白でも役職は簡単には無くならない
しかし、その住民税は前の年にもらっている3,000万円のうちから払うべきものであり、翌年に補填してもらう理由はありません。
長年の慣例なのでしょうが、公然と残された既得権益であることは明白。甘やかしすぎ、と言われても仕方がありません。
そう言われるのはわかっていても、会社上層部としては、将来自分が得るはずの既得権益を手放したくないところもあることでしょう。
黙って顧問、相談役の習慣を継続し、開示もしていない企業が大半なのではないかと思います。
このようにして、未だに相談役や顧問といった、日本独自の役職制度は消え去ること無く残っています。