「年末調整」の時期が近づいてきました。なるべくなら書類にミスの無い方が望ましいですが、寡婦(寡夫)控除は対象の従業員さんが受け忘れやすく、会社の経理担当者も見逃しやすい所得控除です。寡婦(寡夫)控除の定義、対象者と控除額、寡婦(寡夫)控除を受け忘れやすい理由、寡婦(寡夫)控除を見つける方法を一気にご紹介します。
年末調整で従業員が受け忘れやすい所得控除
すっかりと寒くなり、年末の足音が近づいてきましたね。
年末の会計業務で一大行事と言えば、「年末調整」ではないでしょうか?
早い会社さんだと、10月から年末調整用紙を各従業員に配布して、11月末までに回収するという流れで作業を進められているようです。
さて、毎年の年末調整で従業員さんが受け忘れやすく、会社の経理担当者も見逃しやすい所得控除が1つあります。寡婦(寡夫)控除です。
寡婦(寡夫)控除の対象者別〜控除額は幾ら?
寡婦(寡夫)控除とは、配偶者と死別又は離婚した場合に、一定の要件を満たせば所得控除を受けることができる、所得税法で定められた控除制度です。
以下、寡婦控除と寡夫控除の対象者、控除額を簡単に説明します。
寡婦控除
寡婦控除は女性を対象とした控除で、対象者は「一般の寡婦」と「特別の寡婦」に分けられます。
一般の寡婦
一般の寡婦とは、以下2つの要件のうちいずれかの要件が当てはまる人を言います。
- 1)夫と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族となっていない人に限られる。
- 2)夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人。扶養親族などの要件は無し。
特別の寡婦
対して、特別の寡婦は、以下3つの要件を全て満たす者を言います。
- 1)夫と死別し又は離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人
- 2)扶養親族である子がいる人
- 3)合計所得金額が500万円以下であること
一般の寡婦は27万円、特別の寡婦は35万円の所得控除を受けることが可能です。
寡夫控除
寡夫控除は男性を対象とした控除で、以下3つの要件の全てに当てはまる人が対象者となります。
- 1)合計所得金額が500万円以下であること
- 2)妻と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていないこと又は妻の生死が明らかでない一定の人であること
- 3)生計を一にする子がいること。
なお、3)の「生計を一にする子」は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。控除額は27万円です。
寡婦(寡夫)控除の受け忘れを見つける方法
なぜ寡婦(寡夫)控除の受け忘れが発生しやすいかというと、寡婦(寡夫)控除を受けられるか否かの判定は、従業員が自ら行うことになっているからです。
扶養控除申告書にその旨を記載していなければ、会社側が寡婦(寡夫)控除の対象者を認識するのも困難です。
本来なら、寡婦(寡夫)控除の対象者に制度の理解を求めたいところですが、それも現実的に厳しいところ。
しかし、会社側が寡婦(寡夫)控除を受けられる可能性がある人を見つける方法が1つあります。
扶養控除等申告書では『配偶者・無』となっているのに、扶養の欄には子どもの名前が記載されている場合、本人に寡婦(寡夫)控除の対象となっていないか念のため確認することです。※
そうならば、年末調整の経理事務担当者さんにとっては、少し混み入った事情を伺うことになり、やりにくいところもあるでしょうが、対象者である場合は税金が抑えられるので、一度聞いてみることをお勧めいたします。
また、寡婦(寡夫)控除を申請していなかった対象者は、それまでの何年間かも受け忘れが生じていることが多々あります。
過去5年間の控除は基本的に遡って受けることが出来ますから、過去の受け忘れがないか否かも聞いてあげると親切かもしれませんね。
※死別&扶養無しの寡婦控除の場合には上記方法では把握できません。