海外で相続が発生してしまい、日本に住民登録がないと印鑑登録や印鑑証明書の交付を受け取ることができないため、故人の銀行口座は凍結され、お金の引き出しが一切出来なくなります。しかも、その凍結を解除するためには遺産分割協議書がないと銀行は引き出しに応じてくれません。このような事態を防ぐため、海外在住者は相続に備えて事前に2つの書類を用意しておく必要があります。
資産運用と相続には切っても切れぬ関係がある
今回は、海外在住時に相続が起こってしまった場合の対応についてのお話です。
「資産運用」と「相続」は、切っても切れないほど密接に関わりがあります。
資産運用についてお客様とお話をしていると、実家の不動産のことや将来の遺産分割に関することなど、今後起こるであろう相続に関する事柄が話題になることがよくあります。
私の場合、日本ではFP兼行政書士として相続手続き業務も行っていますので、資産運用と相続の関係性について熟知しており、時にアドバイスをさせていただくこともあります。
実際、資産運用を行っていく上では、相続を考慮して行うことがとても大切で、考慮せずに適切な資産の保有や配分が出来ていなかった結果、後から後悔する例が数多くあります。
海外で相続を迎えた時は手続きが煩雑になる
相続や贈与などの知識は、普段はあまり学ぶ機会がありませんので、必要に迫られてから初めて意識することが多いのですが、相続が起こってからでは手遅れの場合もよくあることです。
特に、多くの資産をお持ちの方が「遺言」を残さないままに亡くなられた場合、法定相続人すべてが集まって遺産分割協議を行い、「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
経営者の方は特に、現役を貫き通そうとされる真っ最中に、不慮の病気や事故で亡くなられた場合に、こういった問題が起こりやすいです。
協議がまとまった場合には、遺産分割協議書に署名を行った上で印鑑登録をしている印鑑で捺印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
さて、ここで問題になるのが海外に在住されている方の遺産分割協議書への署名と捺印です。
日本に住民登録がない方は、印鑑登録や印鑑証明書の交付を受けることができません。
しかし、相続が発生してしまった場合には、故人の銀行口座は凍結され、お金の引き出しが一切出来なくなります。しかも、その凍結を解除するためには遺産分割協議書がないと銀行は引き出しに応じてくれません。
海外在住時にはサイン証明と親族関係説明図を必ず事前に用意する
海外に在住されている方は印鑑証明書の交付が受けられないため、印鑑証明書の代わりに「サイン証明」を遺産分割協議書に添付することになります。
このサイン証明とは、日本の印鑑証明に代わるものとして海外の日本大使館や領事館で発給されるもので、申請者の署名が領事の面前でなされたことを証明するものです。
私が現在住むシンガポールの場合、遺産分割協議書を在シンガポール日本国大使館に持参し、領事の面前で署名および拇印し、遺産分割協議書とサイン証明書を綴り合わせて割り印をする必要があります。
なお、遺産分割協議書への署名は、領事の面前で行う必要がありますので、事前に署名をしないで持って行かなければいけません。
遺産分割協議書には、被相続人(故人)の生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍や除籍、法定相続人全員の戸籍などの添付が必要になります。
最近は相続対策の一環として、事前に「親族関係説明図(相続関係説明図)」を作成される方も増えてきています。
「親族関係説明図」の作成を検討される方は、日本全国対応が可能ですのでお問い合わせください。