今年の4月1日から、役員報酬の定期同額給与の対象範囲が拡大されました。これまで役員報酬は「額面」で毎月同じ額支払うことが定められていましたが、これからは「手取り」で毎月同じ額を支払えば良いことになったのです。これからは、6月の税金負担増、10月の社会保険負担増のタイミングで、額面の役員報酬を上げても良いため、役員報酬を手取りベースで定期同額給与とする人が増えそうです。
役員報酬の定期同額給与の対象範囲が拡大した
平成29年の税制改正により今年の4月1日から、役員報酬の定期同額給与の対象範囲が拡大されました。
外国人の役員に対し報酬を支払う外資系企業から、海外の習慣である「手取り額での報酬保障」を認めて欲しいという要望が反映された形です。
改正の影響が及ぶ範囲は、大企業・中小企業問わず対象になります。
以下、詳細をご説明しましょう。
定期同額給与:あなたは額面派?手取り派?
1)そもそも定期同額給与とは?
定期同額給与とは、「その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」です。
役員に支払う毎月の給与の「額面」が、一定でなければならないことを定めた制度です。
2)対象範囲はどう拡大した?
対象範囲の拡大後の定期同額給与は上記に「定期同額給与の範囲に、税及び社会保険料の源泉徴収等の後の金額が同額である定期給与を加える」とされました。
つまり「手取り」が、同額であれば良いことになりました。
これによって、
- 現行の役員報酬:毎月の給与の「額面」が一定でなければ経費にできない。
- 拡大後の役員報酬:「手取り」が毎月一定であれば役員報酬の額面が一定でなくても経費になる
ということが可能になったのです。
例えば、
- 現行の役員報酬:60万円
- 6月に住民税1万円の負担が増大
- 10月に社会保険料1万円の負担増大
という状態になったとしましょう。
現行の役員報酬60万円で計算した場合(単位:万円)
支給時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 合計 |
額面 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 720 |
手取り | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 44 | 44 | 44 | 44 | 43 | 43 | 43 | 530 |
現行の制度では、会社が損金算入できる額は額面の720万円、役員が手取りでもらえる役員報酬は520万円となります。
改正後の役員報酬手取り45万円で計算した場合(単位:万円)
支給時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 合計 |
額面 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 | 61 | 61 | 61 | 61 | 62 | 62 | 62 | 730 |
手取り | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 45 | 540 |
改正後は、会社が損金算入できる額が額面730万円(プラス10万円)に増え、役員が手取りでもらえる役員報酬も530万円(プラス10万円)に増えます。
役員がライフプランを計画しやすくなる改正
このように、税制改正を当てはめると会社が損金算入できる額が増え、役員報酬の手取りも増えるため、両者にとってメリットがある改正ということがわかります。
「手取り」で役員報酬を定期同額給与とすることは更に、「手取り」を把握できるがゆえに、役員にとってライフプランが計画しやすいというメリットもあります。
支払い可能な範囲で、今後は「手取り」で役員報酬を貰う人が増えそうです。