世代格差を埋めるべく、経営者である貴方は社員旅行を計画しました。月毎に社員の給料を天引きし、半分を会社が負担する形としたのです。いざ、旅行の日程が決まった時、ゆとり社員A君が「旅行に行かないので積立金を返して欲しい」「旅行で自分に充てられるはずだったお金がほしい」と言ってきた場合、会社の会計処理はどうなるでしょうか?
世代格差を埋めるべく社員旅行を計画した貴方
古来から、歳を重ねた人々は若い人間に対して「今の若いモンは…」と、嘆き続けてきました。
それは今の時代も何ら変わりません。
いわゆる「ゆとり」と呼ばれる世代の社員たちに対して、多くの諸先輩方は「付き合い悪すぎなんだよ」と、こんな不満を持っています。
確かに、その理屈も理解できないでもありませんが、ゆとり世代(と呼ばれている)にとってみれば、そこには何らかの理屈があるのでしょう。
さて、この世代間の意識格差を埋めるべく、経営者である貴方は社員旅行を計画しました。
ここ一年ほど、社員から月に数千円ずつ給与から天引して旅行費用を積み立て、あとは会社が半分負担する形を取り、準備は万端です。
ゆとり社員のA君が社員旅行を拒否し積立金の返還を求めてきた!
ところがです。
いざ、旅行に行く具体的な日取りが決まったところで、ゆとり世代の社員・A君がいきなり「僕は社員旅行に行きたくありません。」と言ってきました。
A君はひょうひょうとしていますが、仕事はきっちり出来て、しかも真面目に働いてくれる子です。
しかし、飲みニケーションなどにより、コミュニケーションを取る機会がこれまで殆どありませんでした。
なんとか仲良くなりたいと思っていた貴方は、「いや、待て。せっかく費用も積み立てたんだし、せっかくなんだから行くぞ」と説得しますが、A君は一向に「外せない予定がある」と言って、取り合ってくれません。
それどころか、「旅行代金を積み立てた分は、プログラミングスクールへ行くお金に充てたいので、返してくれませんか?」と主張します。
A君から会社が負担するはずだった旅行代金も求められ…
内心は残念に思いながらも、貴方はA君の向上心を尊重し、A君を置いていき、その他メンバーで社員旅行へ向かうことにしました。
まず、当然の話ですが、旅行費用として積み立てたお金は、社内預金の性質を持っていますから、A君の要求通りに返還しなければなりません。
社内規定で、「親睦会費旅行積立」に関して「転用を認める」特則がある場合などは、一概にこれとは限りませんが、原則は返還する必要があるのです。
更にここで、ビックリ仰天な言葉がA君の口から飛び出します。
「社員旅行は福利厚生の一環として行なわれるものであるはずです。旅行に行かないことにした人間には、旅行代金に相当するお金をもらう権利があるのではないでしょうか?」
ムカッと来ますが、A君はなおもこう続けます。
「旅行に行かなかった費用を、プログラミングスクールの受講費用へ追加で充てたいと思っているんです…」
A君の真意を知った貴方は、会社が半額負担して旅行費用に充てるはずだったお金を、A君に充ててあげることに決めました。
旅行に充てるはずだったお金を社員に支給した場合の会計処理
旅行費用に充てるはずだったお金をA君に充ててあげた場合、この費用はどのように処理されるべきでしょうか?
この場合、2つのパターンが考えられます。
旅行費用に充てるお金を個人に渡したとみなす時
旅行費用に充てるお金を個人に支給したとみなす時は、参加者と不参加者の全員に、その不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされます。
従って、この給与は課税の対象となります。
業務に資する研修費用に充てたとみなす場合
A君は、「プログラミングスクールに行く費用」に、旅行で会社が使うはずだったお金を充てたいと言いました。
従って、会社が社員が業務に必要な技術を習得する用途に限定し、受講費用をスクールに支払った場合は、研修費として計上され、会社の経費となります。
さて、楽しかった社員旅行から帰って来た貴方に、A君が近づいてきました。
「先日は、本当にありがとうございました!学校で学んだ技術をもとに、早速〜を作ってみました。いかがですか?」
みせてもらった試作品には、A君がプログラミングスクールへ行って習得した技術が散りばめられています。
「よくやったな!どんなことをスクールでは学べたんだ?教えてくれるかい?」と貴方が言うと…
なんとA君が、「ぜひ!社長に聞いて欲しいアイデアが山ほどあるんです!ご飯でも食べながらいかがでしょうか?」と言ってくるではないですか。
「行きつけのバーにでも連れて行ってあげるか」と考えながら、貴方はA君の瞳に社の未来を見た気がしたのでした。
と、こんな理想的な展開になれば良いのですが…貴方の会社はいかがでしょうか?