予期し得ない災害と遭遇した時に、経営者は業務に対する影響を的確に把握し、復旧させる優先業務を、迅速かつ的確に現場で陣頭指揮を取る必要があります。そのためには、災害の影響度別のシナリオ想定と復旧させるための対策案の抽出を、事前に事業継続計画(BCP)の策定時に検討しておく必要があります。その詳細項目をご紹介します。
予期し得ない災害でも経営者は迅速に的確な指示を行う必要がある
事業継続計画(BCP)の策定にあたって、業務に対する影響や復旧させる優先業務を決めておくことが非常に重要です。
その一つの理由としてあげられるのは、東日本大震災時に想定以上の事象が最も多く発生したため、指揮命令である経営者が迅速に的確な指示を出せなかったことにあります。
あらかじめ想定される被害や、優先的に復旧させなければならない業務を把握しておくことで、被害状況に応じた指示が出せるようになってきます。
また、繰り返しの訓練により、指示がなくても従業員が自主的に行動できるようになってきます。
そこで本稿は緊急事態が起こった時に、災害の影響度別のシナリオをどのように抽出するか?復旧させるための対策案の抽出をどのように行えばよいか?を解説いたします。
災害の影響度別でどのようなシナリオを作るか?
復旧目標時間の設定
中核事業となる業務に対し、経営的主観(金銭的損失、信用的損失、雇用の確保、復旧コストなど)を考慮して、何日で復旧させなければならないのか、業務停止の影響が許容されるタイムリミットを、災害別にシナリオを設定しておく必要があります。
ボトルネックとなる業務の要はどこか
災害によって業務フローが滞ってしまう箇所がどこなのかを見極める必要があります。
その内容が人為的なものなのか、設備や機械によるものなのか、または資金やインフラの停止(電気・電話・通信・上下水道・道路・交通機関・燃料)によるものなのか、原因を特定する必要があります。
業務フロー図に沿って、どの工程にどのようなリスクがあるのか、また人・モノ・金・情報の側面から確認する必要があり、現場責任者や担当者だけでなく、経営者と共にボトルネック判定を行います。
※ボトルネックとは「瓶の首」という表現のように工程上の障害や妨げになるような要因を指します。
業務復旧させるための対策案を抽出しボトルネックを解決するための対策を立てよう
ボトルネック判定を基に必要となる経営資源(人・モノ・金・情報)を使い、解決するための対策案を出します。
例えば、1人の職人にしかできない業務を担当する特殊技能者が被災し、その業務がストップした場合を想定してみて下さい。
他の従業員ではその代わりを務める者が存在せず、これにより後工程が滞ることが予想されます。
これを解決するためには早期に特殊技能者を育成し、その間に定年した従業員を再雇用したり、他部門から臨時派遣してもらう等の対策が考えられます。
さらには、特殊工作機械が地震によって使えなくなった場合を想定し、これを早期に復旧させるために修理メーカーのリスト作りや予備部品の確保や、地震に備えて機械の固定化・転倒防止対策などを講じておく必要があります。
それらを元に提出された対策案に対して第三者的な立場で評価を行い、実施対策をまとめていく必要があります。これには明確な実施部署(実施責任者)や実施時期、予算額などが入っていることが理想です。
- やらなければならない対策やすぐに対応可能な対策⇒応急復旧対策や早期復旧対策として
- 事前の予防対策、またはすぐに対応できないが今後必要となる対策⇒予防対策として
次回は事業継続計画(BCP)の具体的な策定方法を掲載していく予定です。
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著者:
災害リスク評価研究所 代表
松島 康生先生
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