ソニーが9月にも機関投資家向けに、1000億円規模の普通社債発行による資金調達を行うことが、明らかになりました。社債発行による資金調達は、出資や融資を受けることと比較した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、社債の発行元・引受先となる際は、どのような点に注意すべきなのでしょうか?
ソニーが普通社債を発行!その規模は1000億円
ソニーが9月にも機関投資家向けに普通社債を発行し、1000億円規模を調達するとの報道がありました。
M&Aなどの投資資金を確保するのが目的とのことです。
会社が資金調達をするときには、銀行からの借り入れや新株発行といった方法もありますが、今回ソニーが社債を選択した狙いは何でしょうか?
社債発行と、出資や借入との比較をした上で、考えてみましょう。
社債発行のメリットを出資受入・融資と比較
社債とは、要は「借用証書」であり、社債の引受先に対して、一定の利息を支払い、かつ期限には全額を返済しなくてはなりません。
それに対して、新株発行は会社の資本金となるため、返済義務は無く、決まった利息を支払う必要も生じません。
一見すると、株式で資金を調達するほうが有利に思えます。
しかし、安易な新株発行は株価低迷・希薄化を招き、既存株主からの反発を受けやすく、また業績が思わしくないときには、予定通りの資金が調達できない可能性もあります。
その点、社債であればそのような心配はありません。
また、社債の発行により財務レバレッジを大きくできるため、ROE(自己資本純利益率)を高める効果も生じます。
次に、銀行からの借り入れと社債の発行を比較すると、両者の性質には似通ったものがあります。
ただし、銀行借入の難点は、1行若しくは数行との相対取引しか出来ないということです。
相手が少数ゆえに、借入規模に制限がでてきてしまいますし、金利負担などの条件も社債より厳しくなる傾向があります。
現状では日銀のマイナス金利政策の影響もあり、有利な条件での社債発行が期待できることが、社債発行の後押しとなるでしょう。
今回、ソニーが巨額の社債を発行した背景には、これらの要因があるのです。
社債を発行する企業に求められる2つの注意点
では、社債を発行する企業は、どのような点に気を付けなければならないでしょうか?
1)利率の高低は会社の信用度で変化する
社債の利率はその会社の信用度合いを表します。
信用度が高ければ利率が低くても、引き受けてくれる人は多くなりますが、信用度が低ければ、利率を高くしないと誰も引き受けてくれません。
2)確定債務ゆえ返済時期の資金繰りに注意が必要
株式や配当と違い、社債は確定債務です。
利息は必ず支払わなければなりませんし、償還期限が来たら社債の元本全額を返済する義務があります。
そのため、それらの時期の資金繰りには細心の注意が必要です。
社債を引受ける投資家が留意すべき3つの注意点
一方、社債を引き受ける投資家側は、どのような点に注意する必要があるでしょうか?
1)他人への売却時には変動リスクで損が生じる場合も
社債も株式のように売買が可能です。
もし一般の金利より社債利率が高ければ、その社債の人気が高くなり、高値での売買が可能になります。
一方で、一般の金利が社債利率より高くなってしまうと、社債の人気がなくなり低い金額でしか売買ができません。
2)社債を引き受けた企業の業績変動による信用リスクがある
発行会社の業績が悪化し、もし倒産ということになれば、社債は紙くず同然となってしまいます。
リスクは出資の場合と、何ら変わりありません。
3)買い手が見つからない場合は資金を寝かせねばならない流動性リスクが生じる
社債に低い値段しかつかなければ、損をしないためには、償還期限まで保有しておくしかありません。
また信用リスクが高くなって、買い手が見つからなければ、やはり自分で保有するほかありません。
その償還までの数年間は、現金化できず塩漬けの状態となってしまいます。
以上を踏まえて、社債の発行元となる場合、引受先となる場合には、慎重に判断する必要があります。