ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字であり、これらの分野に配慮している企業を重視・選別して行われる投資が、ESG投資というものです。ESG投資が先進国間で広がった理由や、投資手法が未だ抱える課題点について説明いたします。
21世紀の投資手法「ESG」投資とは何なのか?
読者の皆さんは「ESG投資」という言葉をご存じですか?
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字であり、これらの分野に配慮している企業を重視・選別して行われる投資が、ESG投資というものです。
この投資手法は、2006年に国連事務総長だったコフィー・アナン氏が、これからの投資のあるべき姿とし、PRI(Principles for Responsible Investment: 責任投資原則)というガイドラインを制定したことにより、徐々に広まりを見せました。
ESG投資の概念を簡単にかいつまんで説明すると、「結局、長期的な経済の成長を達成するためには、いいことをやっている人へ投資して応援するのが一番の近道だ。」というものです。
ESG投資が先進国で短期間に広まったきっかけ
国際組織の「グローバル環境投資協会」によると、2014年の世界のESG投資の総額は、日本円で約2100兆円の規模に到達しています。
昨今この指標をもとにした投資が拡大していることが伺えます。
ちなみに、2014年の時点でヨーロッパでは60%、アメリカでは30%の投資に関する意思決定に、ESG投資の手法が用いられています。
日本を含むアジアでは1%にも満たない水準ですが、2015年9月には日本の年金運用機関GPIFも、PRIに署名したことから、今後投資における主要な手法となることが予想されています。
ESG投資が重視されるようになったきっかけの一つは、2008年のリーマン・ショックでした。
短期利益を追求した企業の破綻が相次ぎ、また好業績の企業が不正を犯したり、法令違反に至らない不祥事でも、株価が急落したりする企業が少なくなかったのは、皆さんも覚えていらっしゃることでしょう。
このような中で、従来の決算などの財務情報だけでは、適切な投資判断ができないことに鑑み、「環境・社会・ガバナンス」といった財務諸表などでは見えない資産を評価することにより、見えにくいリスクを排除できることで、ESG投資に注目が集まったのです。
ESG投資が更に広がるため解決すべき課題点
ESG投資はこれからメインストリームとなることが予想されていますが、課題点も未だ抱えています。
まず、ESG投資には企業、運用者、投資家(オーナー)で共有できる、統一化された評価フォーマットが存在しません。
ゆえに、企業が開示するESG情報をどのように評価するのかについて、運用者や投資家はまだ手探りを続けています。
また、ESG投資の価値観は、先進国では浸透しつつあるものの、新興諸国では広がりを見せていないのも事実です。
世界のあらゆる地域へ、ESG投資の概念が広まるには、まだ時間が必要なようです。