長年育んできた事業が、著しい成功を見せ始め、遂には大手企業から事業買収の話を持ちかけられました。その事業買収額は、なんと5億円。買収の話に乗ることを決めた時、会社ごと売却するのと事業部門のみ売却するので、得なのはどちらでしょうか?仮定の数字を元に考えてみましょう。
大手から5億で買収提案!悩むのは譲渡の方法
貴方が長年育んできた事業が、著しい成功を見せ始めています。
世の中からも注目され、遂には大手企業から事業買収の話を持ちかけられました。
その事業買収額は、なんと5億円です。
死力を尽くして育て上げた事業ですが、自分達の会社でサービスを囲うよりも、買収を持ちかけてきた大手企業に任せたほうが、より多くの人にサービスを利用してもらえると考え、ついに貴方は事業譲渡を決断します。
譲渡の仕方をどうしようか悩むところです。
会社ごと売却VS事業部門売却はどちらが得?
1)会社ごと売却
まず考えられるのは会社全部を売却する方法です。
具体的には会社の株式全部を売却するという方法で、特に株主が社長一人などの場合には手続きが簡単になります。
仮に、資本金1千万円の会社で出資者=社長(創業者)のみであれば、1千万円の株式を5億円で売却したことになります。
通常ですと、
5億円(売却額)-1億円(資本金)=4.9億円
よって、4.9億円が社長個人の利益(所得)となりますが、税額を計算する際には「取得価額を売却代金の5%相当額」とする特例が適用できます。
こちらを当てはめて計算すると、
5億円-(5億円x5%:特例適用)=4.75億円
となります。
税率は20.315%(所得税15.315%復興税含む+住民税5%)ですから、
4.75億円x20.315%=96,496,250円
およそ9,650万円が税額となります。手元には4億円強が残る計算です。
ただし、当初の出資金額が大きければ所得は減りますし、他の株式売買で損失が出ていると、その損失と相殺できるため、更に税額を減らすことができます。
2)事業部門のみ売却
次にあげられるのが、会社は存続させ該当事業のみ売却するという方法です。
売却の対象となるのは、その事業に必要あるいは負担している資産、負債、人材等ですが、具体的な範囲は先方との交渉で決めることとなります。
会計上は、会社の貸借対照表に載っている資産・負債のうち、売却対象となるものの金額と、売却代金との差額が売却損益となります。
仮に売却対象の資産が5千万円、負債が2千万円とすると、
5億円-(5千万円-2千万円)=4.7億円
つまり、4.7億円が会社の利益(所得)となります。
会社の場合には他の利益等と合算して税額が計算されますが、資本金1千万円の黒字企業を前提とすると、法人税他全ての税率の合計は約39%となります。
よって、
4.7億円x39%=183,300,000円
税額は1億8,300万円となり、手元に残るのは3億円強です。
さらに消費税の課税事業者であれば、売却代金の一部あるいは全額が消費税の対象となりさらに税額が増えます。
条件は会社毎で変わるので譲渡が決まった時点で考えるのがベスト
これらはあくまで仮定の数字です。
例えば、事業部門の売却対象となる資産の金額が大きければ、税額は更に減ります。
また、会社に欠損金税務上の欠損金がある、あるいはほかの事業で赤字が出ているということであれば、それらと相殺できますので、税額は大きく変わってくる可能性があります。
最終的には、事業譲渡が決まった時点で、どちらが有利か慎重に検討しないと、手取り額を大きく減らしかねません。
少しでも事業譲渡によって得られるお金を、自分の手元に残すことで、次の事業展開に生かしたいところですね。