昨年末に決定された政府による”平成27年度の税制改正大綱”に基づく国会審議の目玉は、企業の会計電子化である。中でもインターネットの普及率が限りなく100%に近づいたことに鑑み、領収書の電子化に注目が集まっている。すべての領収書・契約書がスキャナ保存できるようになった場合、企業がどのように具体的な対応を行うべきか提示する。
膨大な会計書類の電子化は国策とみなされる
昨年末に決定された政府による”平成27年度の税制改正大綱”について、税制改正法案が着々と国会で審議されている。
審議の目玉として注目されているのが企業の会計電子化であり、今後の企業運営に大きく影響を与えるといわれている。
会社とは、家庭を巨大化させたような組織で、日々物やサービスを売買することで利益を生み出す。家庭のお財布から出ていくお金は、きっちり家計簿につけておく必要があるように、会社も領収書をもとに会計管理を行う。
現時点で会社は領収書を全て紙で管理しなければならないため、不効率な状態となっている。
そこで政府もインターネットの普及率が限りなく100%に近づいたことに鑑み、領収書の電子化という税制改革に手をつけようとしはじめている。
早ければ今年度中にも領収書の電子化導入か
早ければ2015年度中にも開始されると言われる、領収書のペーパーレス化について、今一度内容を確認しておこう。
これに該当する法律は”電子帳簿保存法”で、現在施行されている内容では、”あらかじめ税務署へ申請することで、3万円未満の領収書・契約書は紙の保存に代えてスキャナ保存できる”とある。
企業においては、3万円未満のものか否かを判別し、スキャナ保存か紙保存と2択する必要があることになり、平成18年から開始したこのスキャナ保存は結局のところ企業には受け入れられず、大半は一律紙で保存している。
3万円未満と価格の上限を定めたのは、スキャナ保存した画像データは比較的修正がしやすいため脱税抑止が理由だ。
今回の税制改革が施行されれば、この上限は撤廃され、すべての領収書・契約書をスキャナ保存すればよいことになる。画像データは一定期間保存する必要があるが、紙は廃棄できることになる予定である。
日本は海外(特に西欧諸国)と比べて、意思決定が多重層を経て行われる。従ってビジネスにおける紙の分量がとても多く、大量の書類を保管する「スペース」「整理する人件費」などコストも必然的に高い。この税制改革が施行されれば、コスト削減、ビジネスの効率化やスピードアップにもつながることが予想される。
電子化に伴い経理作業など大幅な見直し必要
画期的な改革に、いざペーパーレス!と心躍る経営者も多いかもしれないが、そううまくはいかないかもしれない。
詳細は改正後の法律に従う必要があるが、以下の準備を想定しておこう。
- ・明瞭に領収書をスキャニングできる機器の設置
- ・スキャン保存した書類を画像データ化した後、検索できる仕組みの構築
- ・社内での精算処理において、今まで紙で行ってきたものを電子化するルール作り(例 電子印鑑など)
社内の経理作業について、社内全体で大幅なルール見直しが必要になりそうだ。
準備は今すぐに行う必要はないものの、経理部や総務部を中心に制度の変更に目ざとくありたい。