プロ野球シーズンがいよいよ始まりましたが、野球賭博の遺恨はまだ拭われていません。さて、春先といえばゴルフもトップシーズン入りとなりますが、かなり多くの皆さんが賭けゴルフをやられていることでしょう。どんな場合に賭けゴルフは違法となるのか?賭けるとしても合法の範囲に収まるものとは?シーズン前にチェックしておきましょう。
野球賭博が違法なら賭けゴルフも違法じゃん?
先週末、いよいよ2016年プロ野球がシーズンスタートしました。
しかし、盛り上がりを見せようとする開幕直前に、球界で大きな話題となったのは、大谷投手の仕上がりでも、オコエ選手が一軍に残留できるか?という話題でもありませんでした。
読売ジャイアンツに所属していた複数の選手達による、プロ野球や高校野球の試合結果にお金を賭けた、いわゆる「野球賭博」の話題です。
新聞やテレビでは、賭博に関わった選手たちが槍玉に挙げられ、遂には球界追放とさえなりました。
「プロとして、神聖な試合を賭博の道具に使うなんてあってはならないこと」というのが、圧倒的な世論ですし、確かに真っ当な意見と言えます。
ところで、春といえば多くの方が趣味とする、ゴルフもトップシーズン入りですが、皆さん、盛り上がるために賭けゴルフをやる機会はありませんか?
1,000円、2000円…中には、数万単位で金銭のやり取りを目的として、賭けゴルフをされる方もいらっしゃいます。
- 今日は握りますか?
- ナッソー、ショートコーナー、ロングコーナー
- ピン・ポン・パン
ここらへんでニヤッとなった方は、野球賭博のような、人の問題はいざしらず、自らを振り返るべきかもしれません。
賭けゴルフはどんな場合に違法となるのか?きちんと法律を抑えておく必要があります。
以下、解説していきます。
賭けゴルフの違法性有無は刑法185条で確認
まず賭けゴルフに違法性の有無があるかを判断する際に、基本的な指針となる法律をご紹介します。
それは、刑法第185条です。
刑法第185条(賭博)
賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
賭博とは、両者に損が出る可能性を持った偶然のゲームについて、金品や物品の得失を賭けて争うことです。
ゴルフは上手い人と下手な人が戦ったとしても、必ずしも上手い人が勝つことが100%保証されたゲームではないため、偶然のゲームに該当します。
よって、刑法第185条に照らし合わせると、金銭のやり取りを主たる目的として争う賭けゴルフは、残念ながら完全に違法です。
現行犯でも、あとで証拠が見つかった場合でも、逮捕されれば、50万円以下の罰金又は科料(交通違反の時に支払う罰金のような軽い財産刑)に処せられます。
しかし刑法第185条には、 「ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」 という但書があります。
この但書について過去の判例は、「関係者が即時娯楽のため消費するような”もの”」と定義しています。
つまり、その日の昼食代やコンペの商品といった、金額が少額で即時に消費される物品の範囲に収めれば、それを賭博に当たらないと解釈しているのです。
人間の射倖性を一定の範囲で認めつつ、金銭のやりとりを私的に主たる目的として行う賭け事を、日本の法律は認めていません。
200円の掛け金で逮捕された事例も存在する
賭けゴルフがバレて、書類送検となった例も実際にあります。
2006年に、ある有名な大手家電メーカーの社員が主催したゴルフコンペで、一口200円ずつ賭けた合計61人が書類送検されました。(プレーに参加せず賭け事のみに参加した20名も含め)
彼らは、4人1組のチームを1枠として賭け事の対象とし、スコアの少ないチームを予想する権利を「馬券」と称して、賭け合っていました。
3年間恒常的に続いていたことや、「馬券」形式で明らかに金銭を対象としてゴルフコンペを賭け事にしていたことから、敢え無く賭博罪を適用されてしまいました。
もっとも、的中しても配当金はたったの2〜3,000円だったことを考えると、当事者は悔やんでも悔やみきれなかったことでしょう。
賭け事で得られるドキドキ感はとても新鮮なものですが、いつどこで人が見ているかはわかりません。
一緒にプレーする人の中には、賭けに参加するのが嫌なメンバーもいるはずです。彼または彼女が現場を記録して、リークする可能性もゼロではないはず。
野球賭博の問題もそうであったように、軽い気持ちで行った賭け事が法律に引っかかれば、ましてや経営者の立場でそうなってしまえば、会社にも大きなリスクが生じます。
晴れやかな気持ちで、気持よくラウンドを周りたいなら、賭けゴルフは金銭を伴わない範囲に留めるのが賢明でしょう。