不動産の保有手段として、一般社団法人という形態を取るオーナーが増えています。なぜ不動産オーナー達は一般社団法人による不動産の所有を行うようになりはじめているのでしょうか?あまり聞き慣れない一般社団法人の設立要件や、税金面でのメリット、設立するに当たっての注意点などを、税務のプロが解説してくれました。
一般社団法人を活用した不動産節税が広がる
これまで、不動産オーナーが節税等のために法人化する場合、株式会社か合同会社(昔は有限会社)という形態を選択するケースがほとんどでした。
ところが、近年ではその流れが徐々に変わってきており、「一般社団法人」という形態で不動産を所有する場合が多くなっています。
相続でもこの方法を利用されている方は、多くなっています。
ところで一般社団法人ってどんな団体?と思われる方も多いことでしょう。
あまり聞きなれない名前かと思いますので、今回は簡単に一般社団法人についてお伝えしていきます。
一般社団法人を設立するために必要な基本事項
一般社団法人を設立する基本的な要件は、以下のとおりです。
1. 社員数
設立時に、2人以上の社員が必要となります。
2. 定款認証
定款認証には、紙媒体で行う場合と電子定款認証の2種類があります。
電子定款認証は自分で行うことができないため司法書士に依頼することとなりますが、電子定款認証は収入印紙が不要となりますので、司法書士に報酬を払ったとしても負担はあまり変わりません。
手間を考えると司法書士を利用することをお勧めします。
3. 設置機関
社員総会と理事1名以上は必須です。詳細は、こちらのページをご確認ください。
一般社団法人にはどんな節税メリットがある?
肝心な一般社団法人と、課税関係は以下のようになっています。
1. 法人税
一般社団法人は「営利型」と「非営利型」があり、この2種類で取り扱いが異なります。
非営利型の場合には収益事業のみに税金が課税されることになりますが、非営利型として認められるには一定の要件がありますので注意してください。
必ず事前に専門家に確認しましょう。
2. 相続税
株式会社のオーナーとなった場合、自分の会社が利益を積み上げていった場合には、保有株式の価値が連動して増加していきます。
この株式はオーナーが亡くなった際には相続財産となるため、相続人(妻や子供など)はその価値に応じた額の相続税を払う可能性が出てきます。
ところが、一般社団法人には株式のようなものが存在しないためオーナーが亡くなったとしても相続税が課税されることはありません。
現状ですと、このメリット目当てに一般社団法人を設立するケースが増えているようです。
一般社団法人で不動産節税する2つの注意点
このように大きなメリットがあるものの、設立を考えるなら注意したいことが2つあります。
1.知名度はまだまだ
一般社団法人は、株式会社や合同会社に比べてまだまだ認知度が低いです。
ビジネスは信用が第一ですので、消費者や取引先が不安を感じる可能性があるのであれば、避けておくのがベターでしょう。
2. 相続税の改正
現状の法律では、一般社団法人を利用することにより相続税を回避することが可能です。
ただし、現状でも問題点は各方面から指摘されていますので、私の予想では数年以内には何らかの対策が講じられると考えられます。
相続対策は何十年も先を見据えて行いますので、いざというときには思ったような効果が得られないかもしれません。
ただし、対策がされた場合にも、おそらく株式会社に準じた方法の課税方法になると考えられますので、株式会社以上の課税がされるということは考え難いと思います。
設立考えるなら専門家と連携をしたほうが良い
さて、いかがでしたでしょうか。
資産管理会社を設立する場合には、上記の他にも個人所有の不動産の所得をどのように法人に移転するかなど、様々な注意点が存在します。
もし設立を考えられるならば、司法書士、税理士等を上手に利用して失敗のない法人化をしていただきたいと思います。