富裕層や超富裕層と呼ばれる家計に対して、国税局が課税締め付けを強めています。平成27年の税制改正により導入が決まった「財産債務調書」は、いわゆる富裕層と呼ばれる収入・資産を持った人々に対して、資産のありとあらゆる情報を提出することを求めた、罰則規定付き書類です。いわば、お金持ちを丸ハダカにする制度と言って良いでしょう。
富裕層への課税締め付けは年々強くなっている
日本の家計では中間所得層が減ると共に、一部富裕層による財の寡占化が進んでおります。
そこで2014年より、大都市圏の国税局では、特に重点的に管理すべき「超富裕層」に対するプロジェクトチームを組むなどして「超富裕層」の管理・調査体制の強化を図っています。
数え上げれば限りがないほど、節税対策の形態も高度になり多様化していますが、国税局もこれに対応して節税を行う富裕層への課税締め付けを強めています。
平成 27 年度税制改正においては、財産及び債務の明細書を見直し、一定の基準を満たす人(富裕層)に対し、その保有する財産及び債務に係る調書の提出を求める制度が創設されました。
それが本日のテーマにもあげた「財産債務調書」提出の義務付けです。
確定申告の財産債務調書提出は富裕層締め付け
平成28年より、所得税等の確定申告書を提出しなければならない方のうち、
- ・その年度の総所得金額等の合計額が 2 千万円を超える
- ・12 月 31 日において合計額が3億円以上の財産を持つ、または、資産価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する
2つの条件のいずれにも該当する場合は、その財産の種類、数量及び価額並びに、債務の金額その他必要な事項を記載した、財産債務調書を提出しなければならなくなりました。
従来から、これら富裕層には「財産及び債務の明細書」という書類の提出が義務付けられていました。
これまでは、上記条件を満たす場合であっても、
- (1)種類
- (2)細目
- (3)価額
の3つを記入して書類を提出するだけでよく、提出しない場合や漏れがあった場合にも、罰則規定はありませんでした。
対して財産債務調書では、上記(1)〜(3)に加えて、
- (4)所在場所
- (5)用途
- (6)固有名称
まで記載しなければならなくなりました。
加えて以下のようなケースでは、過少申告加算税等が5%加重される、罰則規定も設けられることになりました。
- 財産債務調書の提出が提出期限内にない場合
- 財産債務調書に記入していない資産が発覚した場合
- 所得税の申告漏れが生じた場合
いわば「財産債務調書」は、確定申告を通じて、お金持ちを丸ハダカにする新制度と言ってもよいものです。
現状維持では資産が大きく目減りする可能性も
相続税が平成27年から増税され、今年の1月からはいよいよマイナンバー制度の運用も始まりました。
稼ぐ富裕層からお金を取るためのお堀が、着々と築きあげられています。
加えてマイナス金利の導入で投資への資金還流を促し、近い将来のインフレを狙う政策も実施されていることから、ただ手をこまねいているだけでは、現在富裕層であろうと、保有する資産の価値は大きく目減りしてしまいます。
資産を増やしたり防衛するためには、自発的で積極的な税制改正に関する情報取得を行い、専門家と連携した資産運用方法を身につける必要がありそうです。