プロクシーアドバイザーの存在が全ての企業に影響し始める

資産運用

 機関投資家に「投資する側として企業にモノを言う責任」を追求する制度である「スチュワードシップ・コード」の導入は、機関投資家にアドバイスを与えるプロクシーアドバイザーの存在感を今後強くすることが予測されます。中小企業もプロクシーアドバイザーが上場企業へ求めるROE経営の影響を、取引の厳格化という形で求められることになるでしょう。

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プロクシーアドバイザーってどんな人達?

 「機関投資家に投資する側として企業にモノを言う責任」を追求する制度である「スチュワードシップ・コード」を受け入れる機関投資家は、現時点で184団体となりました。

 今回のスチュワードシップ・コード導入により注目されている業種があります。

 それは「プロクシーアドバイザー」です。

 「プロクシーアドバイザー」とは、平たく言うと「株主である機関投資家へ”アドバイス”を与える商売」です。

 代表格は米国の「インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ社」「グラス・ルイス社」であり、彼らは「プロクシーアドバイザー」最大手企業の2社でもあります。

 特に「インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ社」は、1600社もの機関投資家に”アドバイス”を行い、同社の”アドバイス”は世界の議決権の2割を動かすとまで推測されています。

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プロクシーアドバイザーは公的な機関でない

 記憶に新しい、今年3月の大塚家具の経営権をめぐる問題にも、「インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ社」と「グラス・ルイス社」が大きく関与していると言われます。

 両社は日本でも活動している企業であり、もちろん日本版「スチュワードシップ・コード」について受け入れを表明しています。

 「プロクシーアドバイザー」、和訳すると”議決権行使助言会社”である彼らは、中立的かつ公正な第三者機関ではありません。

 プロクシーアドバイザーを営む企業は、世界中の顧客(機関投資家)を相手に、投資する企業の株主総会議案に対する議決権行使について「賛成」「反対」を”アドバイス”している、あくまで営利目的の企業です。

 どのような基準でアドバイスを行うかについては、これまであまり明らかにはなってきませんでした。

 しかし昨年「インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ社」は、以下3つの基準について議決権行使助言方針(ポリシー)を改訂するとオープンコメントを発表しました。

  • 1. 資本生産性 (ROE)基準の導入
  • 2. 取締役会構成基準の厳格化
  • 3. 監査等委員会設置会社への対応

 特に訂正を正式に発表した「資本生産性 (ROE)基準の導入」は今後、機関投資家の投資行動に大きな影響を与えるでしょう。

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上場企業経営者はROE経営を徹底させられる

 ROE経営とは、「より少ない資本でより多くの収益を上げることを目的とした経営」を指します。

 彼らは、投資家の資金が企業の利益に結び付いたかどうかを示す指標の”ROE(株主資本利益率)”が「過去 5 期の平均の自己資本利益率(ROE)が 5%を下回る企業」に「投資先企業の取締役の選任に反対するよう」アドバイスする指針を2014年11月に正式発表しました。

 彼らは今後、「資本を無駄遣いする無能な役員は、クビにして入れ替えてしまいましょう」と、機関投資家に明確なアドバイスを行います。(一方で基準に満たなくともROEが改善傾向にある企業へは、投資の反対推奨を行わない。)

 更に正式発表で彼らは、将来的にROEの水準を引き上げる可能性があることも示唆しています。

 スチュワードシップ・コードの制度導入は、これまで非効率な収益の上げ方をして、安穏と過ごしてきた経営陣がいるキャッシュリッチ企業にとって、プロクシーアドバイザーの助言を受けた機関投資家達に「モノ申される日」が近づいていることを意味します。

 また上場していない中小企業に対しても、プロクシーアドバイザーの社会における存在感が増すことは、大きな影響を与えます。

 自らの経営する企業が上場していなくとも、多くの中小企業は何らかの形で、上場企業と付き合っていることでしょう。

 付き合っている上場企業が資本生産性の効率化を求められれば、上場企業が中小企業との取引を厳格化(コストダウン/効率化を求める)する予測を立てるのは容易です。

 スチュワードシップ・コードの導入が、社会全体に影響を与えることを踏まえ、今から経営の効率化を目指しましょう。

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