デパート、ガソリンスタンド、コンビニエンスストアから、カラオケまで…あらゆる場面で使用可能になった交通系ICカードですが、みなさんは経費を計算する際にどのような処理をされているでしょうか?
それ、やっちゃダメです。
ICカードを使った場合の、正しい交通費の精算方法を税理士が伝授します。
日本人の4人に3人は持つ交通系ICカード
交通系ICカードを利用できる場所がどんどん増えていますよね。
駅ナカはもちろん、デパート、ガソリンスタンド、コンビニエンスストアから、カラオケまで…
それもそのはず。ICカードの発行枚数は何と約9,000万枚に達しています。
つまり、日本の人口に対して約75%の人が保有している、4人に3人は保有している計算なのです。
平成29年の段階では、これら利用できる鉄道駅が存在しているのは41都道府県で、地方ではまだまだ未整備のところも多いですが、これからどんどん普及していくことでしょう。
そんな交通系ICカードですが、利用するときにはカードにお金を入れる(チャージ)処理が必要になります。
駅にあるチャージ機やコンビニなどでチャージできますし、提携のクレジットカードなどからも自動でチャージするような設定にもできます。
わざわざ切符を買う必要もないので本当に便利です。
Suica入金⇒領収書だけで経費計上はダメ
例えば5,000円をICカードにチャージした場合、5,000円のチャージの領収書をもらうことができます。
この領収書から帳簿に「○月×日現金で駅にてチャージ旅費交通費5,000円」というような処理をしていますか?
仕訳にすると
○月×日旅費交通費5,000円/現金5,000円
という処理となります。
もし、上記のような処理をしている方がいるとすれば気を付けて下さい。
基本的に、交通系ICカードにお金をチャージした際には、その支払いに対して何もサービスを受けていません。
ただ、カードにお金を預け入れているだけなのです。
もし、交通系ICカードを解約したとすれば、チャージしたお金は手許に返ってきます。
従って、「チャージした=お金を預け入れた」という処理を経費として処理してはならないのです。
これらICカードは、チャージしただけでは経費として処理することができないのです。
交通系ICカードにチャージしたお金の正しい精算方法
チャージした時
交通系ICカードにチャージした時は、その交通機関を利用するための「権利」を買っているようなイメージです。
商品券や切手などを買った時と同じようなイメージです。
会計上は棚卸資産(貯蔵品)となりますので、
○月×日貯蔵品5,000円/現金5,000円
という処理になります。
実際に使用した時
交通系ICカードを使って電車に乗ったとします。
その区間の運賃が1,200円だったとすると、
○月××日旅費交通費1,200円/貯蔵品1,200円
という処理になります。
あくまで経費を計上するタイミングはサービス(役務の提供)を受けたときです。
簡単にチャージした金額を精算処理するには?
そうは言っても、いちいち使った時に経理処理するのは面倒くさい・・・(;´Д`)
そのように思われる方も多いかと思います。確かに本来は先述の形で経費処理するのがベストです。
ただ、日常の処理を少しでも簡便化するため、以下のような方法で処理するのが現実的ですよ!
チャージした時
本来は貯蔵品という勘定で処理しますが、簡便的に、
○月×日旅費交通費5,000円/現金5,000円
として処理します。
実際に使用した時
(経理処理なし)
本来はここで経理処理しますが期中での処理は省略します。
決算の時
大切なのはココです。
期中は処理していませんでしたが、決算では必ず振替処理を行います。
決算の時点で、ICカードに残った未使用の残高をチェックします。
例えば3,800円の残高が残っていたとすれば、この残高を貯蔵品に振り替えるという処理をします。
決算日(△月×日)貯蔵品3,800円/旅費交通費3,800円
この処理をすることによって、実際に使用した経費は「5,000円-3,800円=1,200円」ということが計算できます。
そして、残高の3,800円は翌年(翌期)に繰り越されて来年以降の経費として処理していくことになります。
この方法のメリットは、使用するたびにいちいち処理しなくても良い、というところがポイントです。
簡単に精算処理するなら気をつけるべきこと
上記の方法を採用する際には以下のポイントを注意してください。
交通費以外にはICカードを利用しない
SUICAなど最近の交通系ICカードは乗車券以外にも使用することができます。
例えばコンビニでお菓子を買ったり、本屋で書籍を買ったりすることも出来ます。
色々なお買い物でICカードを利用してしまうと、交通費以外の支払も交通費にしてしまうことになります。
これでは正しい会計処理ができません。
この方法を採用するのであれば、交通系ICカードの利用使途は乗車券や交通費のみというルールを決めましょう。
カード利用明細を保管する
駅のチャージ機などにはカードの利用明細を発見してくれるモノがあります。
交通系ICカードの中には、ネット経由などで利用明細表をダウンロードすることができるものもあります。
こういったサービスを利用して「いつどのように利用したか」ということが分かるようにしておきましょう。
例えば、ひと月単位ごとに明細表を取得しておく、といったルールを決めておくと良いかと思います。
期末には残高を確認する
決算期末には、必ずICカードの残高を確認してください。
未使用分については、必ず「貯蔵品」として帳簿上に記録しておくようにしましょう。
最終的に経費として処理するから同じだろうと思われるかもしれませんが、この処理をしておくことが税務署対策にも有効なのです。
税務署の調査官も人ですから、「あ、こういう細かいところもちゃんと処理しているな」と思われれば心象も良くなります。
残高を載せてもそれほど大きな金額にはならないかと思いますので、こういう細かいところの積み重ねを大事にしていきましょう。
いかがだったでしょうか?何でもかんでも領収書があれば経費になると思ったら大間違いです。
きちんと処理するように心がけましょう!
最近では、freeeやMFクラウドをはじめとするクラウド会計ソフトが、ICカードとの連携に力を入れています。
利用履歴を自動で取り込み、仕訳処理も自動化。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。